『お肌と炎症』
「炎症」というと痛みや痒み、腫れなどを思い浮かべるかもしれません。
確かに、「発赤(赤くなる)」・「発熱(熱が出る)」・「仏痛(痛い)」・「腫脹(腫れる)」が炎症の4徴候と呼ばれるので間違いではありませんが、実は炎症には急性炎症と慢性炎症の2種類あり、先述の炎症の4徴候は急性炎症の症状です。
では慢性炎症とはどのようなものでしょうか?
慢性炎症は長期的に持続する炎症のことで、急性炎症との大きな違いは炎症の4徴候などの症状が出ないことです。症状は体が危険な状態にあるというサインでもあるので、自覚症状のない慢性炎症は起こっていても気づかない事がほとんどです。
近年、一見全く関係のない病気と思われていた癌や糖尿病、認知症、アレルギー、高血圧、リウマチ、メタボリックシンドローム、うつ病、クローン病など様々な病気の根底に、実は同じ慢性炎症があることが示され、これらの病気の予防や改善には炎症を抑えることが重要だと考えられるようになりました。
特に近年増加している病気のほぼ全てに慢性炎症が関わっているのです。
そして病気だけでなく、お肌のシミやシワ、たるみ、ニキビにも炎症は深く関わっています。
紫外線を浴びた時に炎症が起こるのは想像がつきやすいと思いますが、洗顔やメイクなどでお肌に触れたり、花粉やPM2.5など空気に浮遊している異物がお肌につくなどの外的刺激や、なんと皮脂が毛穴から分泌される時でさえ、皮膚の内部では微細な炎症が起こっているのです。炎症自体はとても大事な生体防護反応なので炎症が起こることは悪いことではありませんが、問題なのは起こった炎症を速やかに終わらせられないこと。
持続する炎症は気づかないうちにお肌の老化を促してしまうのです。
肌老化を抑えて美しいお肌を保つには、常に起こった炎症を終わらせる力のある体にしておくことが重要なのです。
ではなぜ慢性炎症が起こってしまうのでしょうか?
そして、炎症を速やかに終わらせる方法はあるのでしょうか?
炎症が起こる原因は生活の中に複合的に絡んでいますが、中でも大きく影響するのが食事です。
現代食は昔に比べて体を炎症状態にする食べものが多いと言われています。代表的なのが、糖(精製糖質)、食品添加物、牛乳のカゼイン、小麦のグルテン、ハムやソーセージなどの加工肉、そしてオメガ6系脂肪酸(アラキドン酸)とトランス脂肪酸です。
これらを食べると体内で炎症性サイトカインが上昇したり炎症細胞が活性化して、体が炎症傾向に傾くので、常食している方は恐らく炎症体質になっているでしょう。
出来るだけ減らすことをお勧めします。また特に脂質に関しては、オメガ6のアラキドン酸が炎症を促進する多種多様な物質を産生するのに対し、オメガ3のEPA、DHAは炎症を終わらせる物質を沢山産生して炎症を収束させます。
そしてそればかりでなく、炎症によって傷ついた細胞や組織を修復させる物質も作られ、これにより速やかに体を元の状態に戻します。
このように必須脂肪酸のバランスは、炎症を制御し、恒常性を維持する働きがあるのです。
美しいお肌や健康を維持するには、とにかく過剰な炎症や慢性炎症をストップさせることが重要なので、
アンチエイジングや栄養療法のクリニックなどでは、まず炎症状態のチェックをします。
炎症の指標となるのは血液検査の高感度CRPと血小板ですが、更にその手前の炎症体質かどうかをチェック出来るのがアラキドン酸(AA)とEPAの比率です。
高感度CRPや血小板の数値は現在の炎症状態を表すもの、AA:EPAの比率で分かるのは「炎症を終わらせる能力があるかどうか」と、とらえてください。
AAとEPAのバランスが悪いと体が炎症傾向に傾きます。その状態を放置しておくと慢性炎症が起こりやすくなるだけでなく、血管が硬くなって血流が悪くなり細胞に十分な栄養や酸素が届きにくくなって様々な症状を引き起こします。
特に体の末端組織である皮膚は、血行不良と気づかない程度の炎症の持続により、肌老化が進んでしまうのです。
サイレントキラーである慢性炎症から体とお肌を守るためには、体の中の脂肪酸バランスを整えることが重要です。
整えるために、まずは現在の状態を知ること。
体内脂肪酸のバランスは病院の「脂肪酸分画検査」で測れますが、ご自宅で出来る郵送検査もあるので、ぜひ一度測ってご自身の状態をチェックしてみてください。
♪プロフィール♪
協会顧問.地曵直子
♪職業♪
一般社団法人日本インナービューティーダイエット協会
顧問 地と手 代表 国際食学協会 特別講師 一般社団法人日本オイル美容協会 理事
♪趣味♪
脂質栄養学