【専門家ナビ】地曳直子先生

『新型コロナ重症化リスクを下げる脂質』

中国の武漢で最初に新型コロナウイルスが見つかってからもう1年以上経ちますが、未だ世界中で感染
者が増え続けています。頼みの綱とされるワクチンの接種が諸外国で始まったものの、次々と変異型ウ
イルスが見つかり、ワクチンの効力も危ぶまれる状態で、不安を抱える方も多いことと思います。
しかしながら、1年も経過すると各国で様々な研究結果が出て来て、その中には私たちに希望を与えて
くれるものもあります。
その一つが、オメガ3が新型コロナの重症化や死亡リスクを下げるというもの。
昨年5月のコラムで「EPA・DHAから作られる抗炎症・炎症収束メディエーターは非常に強力な ため、
炎症の嵐であるサイトカインストームに対しても大いに期待出来る」と書きましたが、正にそのような
臨床データが先日発表されました。
一つは昨年12月にアメリカの研究チームから発表された、新型コロナ感染患者100人にEPAを1日8g/与
えたところ、サイトカインストームと血栓形成が抑えられ明らかに重症化が抑制されたというもの。
もう一つはつい先日発表された論文で、新型コロナ患者100人の「オメガ3インデックス」を4分位に
分けて比較したところ、オメガ3インデックスが5.7以上の群はそれ未満の群に比べて死亡率が75%低
かったというもの。
「オメガ3インデックス」とは赤血球のEPA+DHAの割合を表す指標です。
新型コロナウイルスの重症化及び死は、主にIL-6やIL-1、TNF-αなどの炎症性サイトカインが過剰に放
出する状態「サイトカインストーム」によって引き起こされます。
EPA・DHAが新型コロナの重症化・死亡率を下げるメカニズムとして、炎症を強力に収束させるレゾル
ビン、プロテクチンの前駆体であること、また細胞膜のEPA・DHAレベルが上がると逆にオメガ6のア
ラキドン酸レベルが下がるため、アラキドン酸由来の炎症性メディエーターが減少すること、新型コロ
ナ重症化の特徴である血栓形成をEPAが阻害することなどが挙げられています。
以前からオメガ3のEPAやDHAは疫学・介入・基礎研究の様々な研究により抗炎症作用や炎症収束作用
が認められているため、今回発表された研究以外にも各国で複数の研究が現在進行中なので、今後更に
データも出て来るでしょう。
さて、今回の臨床研究で用いられた血液検査は乾燥濾紙血によるものです。
ご存知の方もいるかと思いますが、私はこの検査を広める活動をしています。IBPのみなさんも沢山測
られているので、測られた方はご自身のオメガ3インデックスの数値をもう一度見直してみてください
ね。
恐らく、今回の基準となっている5.7以上の方がほとんどだと思います。
ちなみにオメガ3インデックスが8以上あると、心筋伷塞や心不全など心血管系疾患リスクが優位に低
下することも分かっています。
オメガ3インデックスは赤血球の細胞膜にどのぐらいEPAとDHAがあるかを示す数値ですが、それは他
の細胞膜の比率も反映しています。
細胞膜は細胞の機能を支えて細胞の恒常性を維持するだけでなく、脂質メディエーターの原料のストッ
ク場所でもあります。
血液検査でオメガ3インデックスを測ることで、炎症を抑えたり終わらせたりするための原料がどれぐ
らい蓄えられているかを知ることが出来るのです。
オメガ3インデックスは新型コロナや心血管疾患だけでなく、他の炎症が関わる疾患においても重要な
指標となるので、健康維持のためには8以上を保つことが推奨されています。
もしオメガ3インデックスが低い場合は、魚類の摂取を増やすと数ヶ月で高くなります。
青魚に限らず、油ののった旬の魚はオメガ3が豊富です。
ぜひ美味しく食べてオメガ3インデックスを高めてください。

 

 

 

 

♪プロフィール♪

協会顧問.地曵直子

 

 

♪職業♪
一般社団法人日本インナービューティーダイエット協会

顧問 地と手 代表 国際食学協会 特別講師 一般社団法人日本オイル美容協会 理事

 

♪趣味♪
脂質栄養学

 

 

facebook