【専門家ナビ】地曳直子先生

『エゴマの栄養素』
エゴマ油が健康に良いと話題になったのはここ数年ですが、実はエゴマという植物は太古から私たち日
本人の身近にありました。
関東・中部・東北・北陸各地で5,000年~6,000年前のものと思われる縄文土器からエゴマの実の痕跡が
大量に見つかっています。専門家によるとこのような見つかり方は自生では考えにくく、栽培していた
可能性が高いとのこと。
遥か遠い祖先が育て食していた植物が今なお脈脈と命を繋いでいるという事に、なんだかロマンを感じ
ます。
エゴマは漢字だと「荏胡麻」と書きます。東京の荏原など「荏」のつく地名は、かつてエゴマを栽培し
ていた地だと言われています。
一大産地である東北では、エゴマを「じゅうねん」と呼びます。食べると10年長生きするということか
らつけられた呼び名とのこと。それぐらい、昔から体によいことが経験的に知られていたのですね。
とは言え、いつの間にか胡麻に台頭されて栽培も減り、一部の地域を除いてはすっかり遠い存在になっ
てしまっていたエゴマ。
それが近年油をきっかけにまた見直されて各地で栽培されるようになったのはとても嬉しいことだな、
と思います。
でもエゴマ油はだいぶ知られるようになったものの、植物としてのエゴマはまだまだ知らない人の方が
多いように感じます。
エゴマは私たち日本人が最も身近に感じるハーブの一つである大葉と同じシソ科です。とても似ていま
すが、どちらかというとエゴマの葉の方がミント香が強いです。韓国では昔から葉もよく食されていて、
焼いたお肉を巻いたりキムチにして食べられています。
近年では日本でも夏になると売られているのを見かけるようになりました。香りが強いので好みは分か
れますが、まだ食べたことがない方はぜひ一度食べてみてください。
秋には先端に穂が出来ます。よくお刺身に紫蘇の穂が添えられていますが、エゴマにも同じような穂が
出来て、そこからほんのりと紫がかった白い花が咲き、花が終わると穂の中に種が出来ます。
この種を絞ったのがエゴマ油です。
エゴマ油にはオメガ3のα-リノレン酸が豊富に含まれ、故に健康に良いと注目されているのですが、実
は種には他にもルテオリンやロズマリン酸という素晴らしいファイトケミカルが含まれています。
ルテオリンはポリフェノールのフラボン類に分類される黄色の物質で、抗酸化・抗アレルギー・抗炎症
作用があります。特に抗アレルギー作用はフラボン類の中で最も強力とされています。
また癌細胞のアポトーシス(細胞の自死)を誘導することによる抗がん作用も示唆されています。
ロズマリン酸は他のシソ科のローズマリーやレモンバーム、紫蘇などにも含まれるポリフェノールの一
種で抗酸化力が高く、また近年ではアルツハイマー型認知症の原因物質ともされる脳でのアミロイドβ
の蓄積を抑制することが示されています。
ただ残念ながらルテオリンもロズマリン酸もほぼ水溶性のため、圧搾法の無ろ過製法のエゴマ油に微量
含まれるものの、搾油法によってはほとんど含まれていません。
α-リノレン酸の摂取が目的ならば油が最も効率的なのですが、ルテオリンやロズマリン酸などの栄養成
分を余すところなく摂り入れるには種実を食べるのが一番です。
エゴマの実は胡麻や亜麻、チアシードなど他の種実類と比べて外皮が薄いので、擦り潰さなくてもある
程度吸収されますが、より吸収率を高めるには軽く煎ってから擦るのがお勧めです。
青菜を和えたり、ふりかけにしたり、お味噌汁や納豆など日々の食事にプラスすると美味しさも栄養価
もアップします。
スーパーなどではあまり販売されていませんが、自然食品店やインターネットでも買えますし、この時
季は地方の道の駅などで驚くほど安く手に入ることもあります。
春の花粉症で悩まれている方は、今頃から食べていると症状が軽くなるかと思います。
ぜひ見つけて食べてみてくださいね。

 

 

♪プロフィール♪

協会顧問.地曵直子

 

♪職業♪
一般社団法人日本インナービューティーダイエット協会

顧問 地と手 代表 国際食学協会 特別講師 一般社団法人日本オイル美容協会 理事

 

♪趣味♪
脂質栄養学

 

 

 

 

 

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