「疲労」を感じる本当の原因は脳の疲れにあります
「疲労」は体へのアラーム 正しく理解して対処しよう
「毎朝体がだるくて起きられない」「疲れが溜まって何をするのも元気が出ない」
疲労は、多くの方々が感じている生理現象です。人間は、疲労時には「疲れた」と自覚しますが、この感覚は痛みや発熱と並んで体への三大アラームと言われており、大切な防御シグナルです。
私たちは疲れを感じる時、それが筋肉などの体全体の疲労であると考えがちです。しかし、日常生活で疲労を感じる際に、筋肉は異常を示す数値にはなりません。つまり、普通の暮らしをしている中で私たちが悩んでいる疲労の原因は、筋肉とは違うところにあります。
また、栄養の不足による疲労というのは、現代の日本人においてはほぼ見られません。私たちの疲れはスタミナ食を摂ったからといって解消されるものではなく、反対に食べ過ぎて疲れていることもあります。このように現代の疲労は摂取エネルギーともむう関係です。
疲れを感じるのは脳が正しく働いていないから
実は、疲れたと感じた時の脳内の変化を見ると、運動でもデスクワークでも脳の自律神経が強く疲労していることがわかっています。自律神経は、心拍数を上げる、呼吸を早くする、体温調整のために汗を掻くといった体調管理や、ストレスやリラックスの状態を調整するなど、交感神経と副交感神経の働きで成り立っています。つまり、頭を使う場合も体を使う場合も、疲れるのは脳なのです。
社会的に問題になっている「過労死」ですが、動物には過労死はありません。疲労を感じると動物は休むのが基本です。しかし、人間は脳の前頭葉という部分が発達しているため、ドーパミンやβエンドルフィンなどの興奮物質が分泌され達成感を生みます。この達成感が疲労にマスクをかけてしまい、疲れているのに疲労感を持つことがなくなってしまいます。仕事に充実感を持って取り組んでいる人や、仕事を達成しなくてはならないと生真面目に考える人ほど、こうした現象が起こりやすくなります。
では、脳に疲労を引き起こす原因は何なのでしょうか。研究調査によって、脳の疲労は活性酸素が原因であると指摘されています。脳の神経細胞は、酸素を取り入れてエネルギーを作り出していますが、活動するほど酸素が多く消費され、その一部が活性酸素になります。疲労とは、活性酸素が過剰に作られて脳を操っている自律神経に有害な作用が加わり、自律神経が正常な働きを果たせなくなっている状態なのです。
脳に疲れを溜めないため、短い休憩や切り替えを大切に
長時間のデスクワークで脳を使い続けると「飽きた」「眠い」と感じることが多くなります。これは「これ以上、脳の神経細胞を使わないで」というアラームなのです。このアラームを超えて脳を使い続けると、疲れが溜まっていることすら感じなくなってしまいます。そのため、作業中に飽きたなと感じたら、まずは短時間の休息をとる、もしくは違う作業に切り替えるなど、脳の疲労を溜める前に解消することが必要です。
特に近年は、インターネットやスマホの普及により、1日に触れる情報量が増加しています。情報処理を一気に行うと脳が処理しきれない状態となり、脳疲労に拍車をかけてしまいます。自宅時間や休日に、情報から離れてみることも大切です。
脳の疲労を回復させるために、普段から睡眠の質をあげることが欠かせません。下の表に睡眠の質を上げるためにできることをまとめてみました。「疲労回復のために脳を休ませる」という意識を持って生活してみましょう。
〜脳の疲労を回復させるために睡眠を大切に〜
・ノンレム睡眠が脳の疲労を回復させます
ノンレム睡眠は大脳も体も寝ている状態で、脳の疲労回復を促します。入眠3時間後に分泌される成長ホルモンは、疲労回復や細胞の修復に役立っています。
・睡眠は長さと共に質が大切
適切な睡眠時間は、45歳までは約7時間、45歳以上は6から6.5時間くらいと提唱されています。また、寝るまでの時間の過ごし方で睡眠の質を上げることが大切です。
<自宅で気を付けたい過ごし方>
就寝時に明るくし過ぎない、就寝前のスマホ使用を控える、入眠する1-2時間前に入浴する、お腹いっぱいのままで眠らない