【専門家ナビ】高畑宗明先生

どうして三密になるとコロナに感染しやすいの?

 

「三密」とは、そもそもどういう状況を指すのでしょうか?

 

新型コロナウイルス(COVID-19)について緊急事態宣言が解除され、街に出かける人が増えつつあります。こうした中、改めて「三密」を避ける意識、ソーシャルディスタンスを保つ意識を持つことが大切になっています。では、そもそもなぜ三密はウイルス感染が広まりやすい環境なのでしょうか?

 

まず、「三密」の定義について説明します。それは、“密閉”、“密集”、“密接”です。この三つが重なる時が、感染が広まりやすい場面と考えられています。

 

密閉:

密閉とは、窓がなかったり換気ができなかったりする場所のことです。会議室や多目的室、塾や図書館、映画館、カラオケボックスなどがこれにあたります。

 

密集:

密集とは、人がたくさん集まったり、少人数でも近い距離で集まることです。テーマパークや商業施設、スーパー、学校、電車、喫煙場所、ライブハウス、喫茶店、レストランなどがこれにあたります。

 

密接:

密接とは、互いに手が届く距離で会話や発声、運動などをすることです。職場や飲食店、公共交通機関での会話や、集団でのランニングやウォーキング、ジム内での多人数での運動がこれにあたります。

 

この「三密」が重なる場面では、ウイルス感染が通常よりも広がりやすくクラスターが発生しやすい状況になります。

 

どうしてウイルスは三密で感染が広まりやすいの?

 

まず、菌とウイルスは違います。私たちが「菌」と呼んでいるのは基本的に「細菌」を示します。乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌、酢酸菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌など、善玉・悪玉に関わらずこれらは細菌です。もっと大きな菌には酵母やカビがあります(真菌)。細菌は1つの細胞でできている生物で、基本的な細胞の働きは私たち人間と同じです。細胞の中に酵素やATPなどの分子をたくさん持っていて、自分で増えていくための遺伝子や工場の仕組みや材料を持っていて、エネルギーを作ることができます。つまり、自分自身で細胞分裂することで自分で増えていくことができます。

 

一方で、ウイルスはそうした細胞や、増える仕組みを持っていません。単に、袋の中に遺伝子が入っているだけの単純な構造です。自分で増えていこうとしても、工場もエネルギーも持っていないため自分では増えることができません。そこで、ウイルスは他の生物の細胞の中に感染して入り込み、その感染した相手の細胞の力を乗っ取ることで増えていく戦略をとっているのです。

 

ウイルスは何かの生物に感染して、その力を借りなければ増えることができません。そのため例えば人に感染した場合、感染した人にくしゃみをさせたり、近距離で話をする際に唾と一緒にウイルスを吐き出すことで近くの人に感染し、さらにその人から人へと感染が広まることでウイルスは増殖していくのです。これが、三密が重なった場合に感染が爆発的に広がり易い主な原因です。

 

また、ウイルスは非常に小さいことも特徴です。普通の細菌の細胞の100分の1から1000分の1程度の大きさです。このように小さく軽いウイルスは、重力によって下に落ちにくく、空中を漂っている時間が長くなります。つまり、換気をきちんと行うことは、空中を漂っているウイルスを一つの場所に留まらせないために大切なのです。

 

さらに、ウイルスには空気感染や飛沫感染、接触感染といった感染の種類があります。接触感染は、手や器具、タオルや手すりなどの物体の表面を介して感染するタイプです。空気感染は、ウイルスが空気中に飛び出して、乾燥した状態でも生き延び、1m以上超えて人に感染していくタイプです。飛沫感染は、ウイルスが咳やくしゃみなどにより、細かい唾液や分泌物に包まれて空気中に飛び出し、約1mの範囲で人に感染させるタイプです。

 

おそらく新型コロナウイルス(COVID-19)は飛沫感染タイプと考えられています。そのため、1mは最低限人との距離を保つこと、念のため2mの距離を保つソーシャルディスタンスを提唱されているのです。また、マスクの着用は自分自身の咳やくしゃみ、唾液を近くにいる人に広めないために欠かせないアイテムとなります。もちろん、ウイルスが手すりやドアノブ、机などに付着しているリスクもありますので、接触感染を避けるためにも正しい手洗いや環境中のウイルス対策も大切です。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)の対策には様々な点が挙げられますが、今回は「三密」という点からなぜ三密を避けなければならないのかについてお伝えいたしました。誰もが今後気を付けなければならないソーシャルディスタンス、新しい生活様式をきちんと取り入れるために、こうした理由をきちんと理解しておくと、どの場面で気をつけるべきなのかが分かってくると思います。これまでの事例から、感染の広まりは最初はクラスターから発生していることは明らかですので、こうした場所を作らないように気を付けて生活していきましょう。

協会顧問・高畑宗明 博士

職   業 博士(農学) 岡山県岡山市出身。 岡山大学大学院にて博士号(農学)を取得。現在、腸内細菌や乳酸菌についての研究を続けている。 一般の方々や小学生への講演・食育セミナーを通じて、啓蒙活動を行っている。
保 有 資 格 【経歴】 株式会社バイオバンク 統括部長 博士(農学) 2009【年3月 岡山大学大学院(博士後期課程)卒業 博士(農学)取得 2013年〜14年 麻布大学共同研究員 【業績】 ・論文発表 M. Takahata et al, OM-X®, a Fermented Vegetables Extract, Facilitates Muscle Endurance Capacity in Swimming Exercise Mice. Nat Prod Commun. 12, 111-114 (2017) M. Takahata et al, Fermented vegetable and fruit extract (OM-X®) stimulates murine gastrointestinal tract cells and RAW264.7 cells in vitro and regulates liver gene expression in vivo. Integrative Medicine. 4, 1-5 (2017) M. Takahata et al, OM-X®, Fermented Vegetables Extract Suppresses Antigen-Stimulated Degranulation in Rat Basophilic Leukemia RBL-2H3 Cells and Passive Cutaneous Anaphylaxis Reaction in Mice. Nat Prod Common. 10, 1597-1601 (2015)
ブ ロ グ
得意ジャンル 【書籍執筆】 「腸内酵素力で、ボケもがんも寄りつかない」 講談社+α新書 「自分史上最高の腸になる! 腸で酵素をつくる習慣」 朝日新聞出版
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