『亜麻仁油摂取と体内脂肪酸』
今回は脂質の摂取と体内脂肪酸の変化について書きます。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私は日本リポニュートリション協会という社団法人を主
宰しています。
「リポニュートリション」は聞き慣れない言葉だと思いますが、「リポ」は脂質(lipid)の略、「ニュー
トリション」は栄養なので、「脂質栄養」という意味になります。
少し前まで、脂質は「カロリーが高い」「たくさん食べると太る」というように、量的な視点で語られ
ることが多かったのですが、近年では量よりも質が大事であることが明らかになり研究領域から「リポ
クオリティ」(脂質の質)という言葉が生まれました。
「質」とは、酸化の度合いや製造方法などによるものよりも、むしろ、オメガ3やオメガ6、または脂
肪酸の個々の「種類」をさします。
日本リポニュートリション協会では、「測る・知る・整える」と言うテーマを掲げ、血液検査によりご
自身の体内脂肪酸の状態を知り、食事での脂質の摂り方を変えることで体内のリポクオリティを整える
ことを推奨しています。
その活動の一環として、今年の1月から3月までの3ヶ月間、普段オメガ3系のオイルを摂っていない方
15名に亜麻仁油を1日5g程毎日摂ってもらい、摂取前後で体内脂肪酸がどのように変化するかを試しま
した。
測定項目はオメガ3のα-リノレン酸、EPA、DHA、オメガ6のリノール酸、アラキドン酸(AA)で、中で
も重要なのがEPAとアラキドン酸(AA)の比率になります。
摂取前の測定では2名を除く全員が、平均よりα-リノレン酸が低い状態、EPA、DHAもほとんどの人
が低い状態でした。
今回摂取したのは亜麻仁油なのでα-リノレン酸が上がることは予測出来ましたが、他の脂肪酸はどうな
るだろう…と思っていたところ、ほとんどの方がEPAも上がり、重要な指標であるAA:EPA比(アラキド
ン酸とEPAの比率)も改善しました。
今回亜麻仁油以外の食事については、魚やお肉の摂取量と調理法、使用している油脂類、加工品や揚げ
物を食べる頻度など簡単な質問票に答えていただくだけでしたが、亜麻仁油摂取前と摂取期間中でみな
さん特に食が変化したとういことはなかったので、恐らく亜麻仁油からのα-リノレン酸摂取量が増え、
体内でEPAに代謝されたことと、α-リノレン酸からEPAの代謝に代謝酵素が使われることで、オメガ6
のリノール酸からアラキドン酸への代謝率が下がり、アラキドン酸(AA)が減ってAA:EPA比が改善した
のではないかと考えられます。
もしかしたら、1度目の測定値が悪かったので、お魚を増やしたり揚げ物を減らすなど、亜麻仁油以外
に食事も変えた方もいるかもしれませんが、いずれにしても皆さんの体内脂肪酸バランスが改善したこ
とはとても素晴らしいことだと思います。
中には長年重度の花粉症で苦しんでいたのが、今年はほとんど症状が出なかったと驚いている方もいま
した。
前回コロナウイルスのサイトカインストームとオメガ3の抗炎症について書きましたが、オメガ3(特に
EPAとDHA)は、免疫を免疫を制御したり炎症を抑える(収束させる)脂質メディエーターを生成して恒常
性を維持する機能を持ちます。
一般的に私たちのホメオスタシス(恒常性維持機能)は自律神経系、免疫系、内分泌系の3つのシステム
で支えられていると言われていますが、実は脂質メディエーターもホメオスタシスに関わっているので
す。
そして、ここが大変重要なのですが、自律神経系、免疫系、内分泌系は内因性であり意識的に動かすこ
とが難しいのに対し、脂質メディエーターは摂取する脂質を変えることで動かすことが出来ます。
むしろ摂取するものでしか整えることが出来ないのです。
ホメオスタシスを維持するためには体内のリポクオリティを整えることが重要。
そのためにはまず今の自分の状態を把握すること、そして目的に向かってリポニュートリション(脂質栄
養)で整えることが重要です。
「測る・知る・整える」
ぜひみなさんも機会があれば体内脂肪酸測定をしてみてください。