【専門家ナビ】地曳直子先生

『抗ウイルス作用と栄養療法』
新型コロナウイルスの感染が広がる中、世界の国々では薬以外の対処法を見出すための研究が始まって
いますね。
その一つがビタミンD。
中国やスペインでは既に新型コロナウイルスとビタミンDの臨床研究が始まっているし、アイルランド
やハンガリーからは、これまでに分かっているビタミンDの感染症に対する情報をもとに、新型コロナ
ウイルスに対しても感染リスクを下げる可能性があるという論文が出ています。
感染症に対するビタミンDの働きは
・菌やウイルスと戦うカテリシジンやディフェンシンという強力な抗微生物ペプチドを作り、ウイルス
感染のリスクを軽減させる
・呼吸器感染症のリスクを軽減させる
・ウイルスの複製を阻害する
・ビタミンD欠乏は急性呼吸窮迫症候群の一因となる
など多数あり、様々なエンベロープウイルス(ロタウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、デング熱
など)に対してもビタミンDの抗ウイルス作用が示されています。
また、新型コロナウイルスの重症患者ではINF-γとIL-6などの炎症性サイトカインの数値が高くなるこ
とが知られていますが、ビタミンDはこれらの炎症性サイトカインの過剰を抑える可能性があるとの報
告もあります。
もちろんこれらの発表は新型コロナウイルスでの臨床結果ではなく可能性を示唆するものですが、十分
に可能性はあると思います。
アメリカ疾病管理予防センターの元理事長はじめ、栄養療法を実践する多くの医師はビタミンD摂取を
勧めていることはご存知の方も多いかと思いますが、残念なことに日本の厚労省はそれを認めず、
「新型コロナウイルスにビタミンDが効く等の情報に注意」というタイトルで以下の文章をホームペー
ジに記載しています。
「ビタミンDがインフルエンザに対して限定的な予防効果を示した論文を用いて、ビタミンDやビタミ
ンCが新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) に対しても効果があるように謳う宣伝が見受けられます
が、現時点ではそのような効果は確認されていません。
具体的には、ビタミンDのインフルエンザ予防に対する有効性を検討した論文では、1報がA型インフル
エンザ罹患率低下を示していましたが、同論文でB型インフルエンザ罹患率は有意差はないものの増加
していました。また、1報は発症リスク等に影響は認められませんでした。
ビタミンDの上気道感染症予防に対する有効性を検討した論文では、2報は発症リスク等に影響は認めら
れず、もう1報は発症リスクの増加、症状の持続期間の延長が認められたという内容でした。
現時点では、インフルエンザに対して「ビタミンDが効く」といえる十分な情報は見当たりません。ま
してや、新型コロナウイルス感染症に対して検討した論文は見当たりませんので、情報の拡大解釈には
ご注意ください。」
以上のようにビタミンDの効果が示されなかったいくつかの論文を紹介していますが、実は感染症とビ
タミンDに関しては効果があったとする論文の方が圧倒的に多いのです。
なぜ国がこのようなことを公に載せるのか、その意図は分かりませんが、恐らくこれを見て「ビタミン
Dは効果ないんだ」と思われる方も多いと思います。
食や栄養に関わるみなさんはご存知かと思いますが、日本は医学と栄養学が分かれていて、医学に比べ
て栄養学が軽視される傾向があります。
でも今回の新型コロナウイルスで周りを見て感じたことは、元々栄養の知識がない人ほど不安になって
いるということです。逆に、食や栄養で体が整えられると知っている人たちは、過度に恐れることなく、
それまで以上に食に意識を向けて、腸を整えたり免疫力を高める栄養をとったりしていますね。
恐らく厚労省が掲載しているビタミンDに関する情報を見ても、他のエビデンスを知っているかいない
かで判断の仕方は全く異なってくると思います。現に私の知り合いでも、ビタミンDサプリを勧める人
のことを便乗商売と捉えている人もいます。
確かにこのような世界的な混乱の時はデマが流れたり便乗商売が横行したりすることは大いにあります。
情報が流しやすくも取りやすくもなった今だからこそ、私たち一人一人がリテラシーを高める必要があ
ると改めて感じました。
かつて医学の父と呼ばれるヒポクラテスが「汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ」と言い、食育の
祖とも呼ばれる石塚左玄は「食は命なり」という食養道を説きました。
新型コロナウイルスは、この食の基本を私たちに考えさせてくれる機会でもあるように感じています。
少し話がそれましたが、今回のビタミンDに限らず、食を変えたりサプリメントを摂ることでリスクが
軽減する可能性があるならば、そしてそれが経済的な負担も軽く副作用のないことならば、否定せずに
やってみる方が良いのでは、と個人的には思っています。
そして、ビタミンDを効率的に摂れる食材と言えば、お魚ですね!
私は普段から脂質栄養の観点からお魚が多いのですが、最近は更に意識して頻繁に食べるようになりま
した。
実はビタミンDだけでなく、EPAの代謝物は免疫機能に大きく関係しているのです。
詳細はまた次回書きますが、お魚を食べればオメガ3・ビタミンD・タンパク質という感染症に対して
も重要な働きをする栄養が一度に摂れるのでお勧めです。
自宅にいることが多い今だからこそ、ぜひ新しいお魚料理にも挑戦してみてくださいね!

協会顧問・地曳直子

職   業 一般社団法人日本インナービューティーダイエット協会 顧問 地と手 代表 国際食学協会 特別講師 一般社団法人日本オイル美容協会 理事
保 有 資 格
ブ ロ グ
得意ジャンル 脂質栄養学
趣   味

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