『ウイルス感染と手指消毒』
前回新型コロナウイルスとココナッツオイルについて書いてから1ヶ月経ちますが、まだまだ世界中で
混乱が続いていますね。
今回はウイルスの感染経路の一つである接触感染について書きます。
新型コロナウイルスの感染経路として、飛沫感染と接触感染があります。
飛沫感染は感染者のくしゃみや咳、つばなどの飛沫と一緒にウイルスが放出され、別の人がそのウイル
スを口や鼻から吸い込み感染する経路で、接触感染は感染者が物に触れてウイルスが付き、別の人がそ
の物に触ってウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染する経路ですが、手に傷が
あった場合はその傷からも感染します。
今、お店や銀行など不特定多数の人が出入りしたり、また同じものを触るような場所の多くに、接触感
染を防ぐためのアルコール消毒液がおいてありますね。
新型コロナウイルスのようなエンベロープ(脂質膜を持つ)ウイルスには、それを溶かして死滅させるア
ルコールが有効なため、予防策としては良い方法だと思いますが、一方で皮膚に対する刺激もとても強
く、肌を荒らす可能性の高い物質でもあります。
皮膚は外部から異物が侵入するのを防ぐ働きを持つ、人体最大の免疫臓器です。
皮膚には大きく分けて3つのバリアが存在し、連動しながら外敵と戦っています。
第1バリアは皮膚の最外層の角質層
第2バリアは顆粒層のタイトジャンクション
第3バリアは皮膚に常在または浸潤する免疫細胞による抗原抗体反応
第1バリアである角質層は水分(天然保湿因子)を含んだ角質細胞がレンガ状に層をなし、その細胞と細胞
の間をセラミドなどの細胞間脂質で満たして水分の蒸散を防いでいます。
さらに表皮の外側は天然のクリームである皮脂が膜状に広がり、皮膚の保護と保湿をしています。
アルコールは脱脂作用が強く、また揮発性も高いため、揮発する際に皮膚の水分も一緒に揮発させてし
まうため、頻繁に使うと、まず皮脂や細胞間脂質などの脂質が失われ、脂質が失われると脂質で守られ
ていた角質細胞内の水分も失われ、角質細胞のラメラ構造が崩れてしまったり、乾燥して傷が出来やす
くなってしまいます。
そうなると、本来持っている皮膚のバリア機能は破綻し、通常ならば皮膚から出来ないはずの菌やウイ
ルスが直接皮膚から侵入してしまうことになるのです。
これでは、感染予防のためにしていることでかえって感染リスクをあげてしまいます。
とは言え、今どこに行ってもあちこちにアルコール消毒液が置いてあり多くの人がそれを使っているの
を見ると、やっぱり自分もやらないと…と不安になってしまうかもしれませんし、お店によっては強制
的に手を出させてシュッシュッとされてしまうこともあるので、アルコール消毒自体を避けるのは難し
いと思います。
なので、そういう場合は必ず保湿することを心がけるようにしてみてください。
理想は、失われた脂質と水分を与えるのが良いのですが、オイルはべたつくので日中は使いにくいと思
うので、日中は軽めの乳液のようなものでも良いと思います。ポイントは、アルコール消毒するのと同
じ回数でこまめに塗ることです。
夜は皮脂に近い脂質を含むオイルでのケアが良いです。特に乾燥している場合はオレイン酸、リノール
酸のような保湿力の高いオイルや、皮膚のバリアにおいて重要な成分であるワックスエステルを経皮摂
取させることも重要です。
オレイン酸はオリーブオイルやアボカドオイル、マカダミアナッツオイルなどに多く含まれ、オレイン
酸とリノール酸をバランスよく含むオイルには米油やアルガンオイルがあります。特に米油には乾燥性
の皮膚疾患の予防・改善に役立つγ-オリザノールが含まれれるのでお勧めです。
またワックスエステルはホホバオイルや蜜蝋に含まれます。
べたつくのが苦手な場合はホホバオイルを、しっかり保湿をしたい場合は蜜蝋が良いと思います。
バリア機能を正常に保つためにも、ぜひ皮脂の状態を整える保湿ケアをしてみてください。