【専門家ナビ】地曳直子先生

『CBDオイルについて』
近年欧米諸国をはじめ、日本でもブームになっているCBDオイル。見かけたことや使ったことのある方
もいるかと思います。
CBDとは大麻草(カンナビス)に含まれる成分の一つであるカンナビジオール(CBD)のことです。大麻草
には100種類以上の成分が含まれていて、その主成分がCBDなのですが、もう一つよく知られている成
分にTHC(テトラヒドロカンナビノール)があります。THCは幻覚作用などの精神作用が強く、これが含
まれるものはいわゆる違法の大麻になります。
ただ、THCは副作用はあるのの薬効も強いので、欧米では医療大麻として医療に用いられる場合は合法
になっている他、カナダでは昨年一般での使用も合法化しました。
CBDはTHCのような精神作用や常用性はないと言われていて、薬効は多岐に渡り、てんかんをはじめ、
睡眠障害やうつ病、癌、痛み、炎症など様々な症状に対して有効という報告があります。
なぜCBDの作用が多岐に渡るかというと、私たちの体内には本来エンド・カンナビノイド・システム
(ECS)という身体調整機能が備わっており、加齢やストレスなどによりその機能が低下すると様々な疾
患になりやすくなるのですが、CBDを外から補うことでECSの機能低下を防ぐためとされています。
薬効があり安全性も高いということで世界的なブームとなり、舌下に垂らすオイルタイプのものだけで
なく、パウダータイプやタバコのように吸入するタイプ、クリーム状で経皮吸収させるもの、食品やド
リンクに添加したものなど様々なCBD製品が欧米を中心に出回っています。
しかしそんな折、先日アメリカで大きな動きがありました。
FDA(米国食品医薬品庁)が、CBDの安全性を裏付ける科学的情報の不足から、CBDがGRAS(グラス)であ
るとは結論づけられないと表明したのです。
GRASとはGenerally Recognized As Safe(一般に安全と認められる)の頭文字で、食品添加物の安全
性を保証する基準。アメリカでは、食品に使用する原料はFDAによる許可を得た食品添加物かGRASし
か使用出来ないため、今後アメリカでCBDを食品やサプリメントとして販売することが難しくなる可能
性が高くなると思われます。
これまでCBDに対して明確な態度を示していなかったFDAが、CBDがGRASではないと表明したのはと
ても大きなことで、今後世界のCBD市場に与える影響も相当なものと思われます。
FDAはCBD製品を販売する15社に警告書を送り、更に同日消費者に対して注意を呼びかける内容をホー
ムページに掲載しました。
そこには、「CBDは医薬品、食品、栄養補助食品、化粧品など様々な製品として販売されているが、
FDAが承認したのは重度のてんかんを治療する1つの処方薬だけであり、CBDの身体への影響を含む情
報は非常に限られている。
FDAはCBDに対する公共の関心を認識しているが、CBD製品の科学、安全性、および品質に関して多く
の未回答の質問がある。

当局は継続的な取り組みを通じてこれらの質問に答えることに取り組んでいる」とあり、CBD製品に関
する表示や品質に関することの他、健康リスクについても書かれています。
リスクについては以下をあげています。
・肝障害を起こす可能性がある。
・薬物相互作用ー他の薬物の代謝に影響を与え、深刻な副作用を引き起こす可能性がある。
・アルコールまたは他の中枢神経抑制薬と一緒にCBDを使用すると、鎮静および眠気のリスクが高まり、
怪我につながる可能性がある。
・覚醒の変化ー傾眠(睡眠または睡魔)
・胃腸障害ー下痢および食欲減退
・気分の変調ー過敏症、興奮
また、まだ解明されていない点として、以下をあげています。
・毎日CBDを長期間服用するとどうなるか?
・発達中の脳(CBDを摂取する子供など)に対するCBDの影響は?
・発達中の胎児または母乳で育った新生児に対するCBDの影響は?
・CBDはハーブや植物とどのように相互作用するか?
・動物の研究で報告されているように、CBDはヒトに男性生殖毒性を引き起こすか?
※動物実験ではCBDにより精巣の大きさが減少、精子の成長と発達阻害、テストステロンが減少
植物の成分なので、他の植物同様すべての成分が解明されている訳ではないのは当然です。漢方やアー
ユルヴェーダなどの伝統医療で使われる植物でも、安全性が担保されていないものもありますね。
でもこれらの伝統医療は、相手の体質や状態を見極めて適量を処方するという共通点があります。
今ブームになっているCBDは、まだまだそのような経験値も科学的データも少ないです。
特に嗜好品として使う場合は、そもそも本来自分自身が持っている身体調整機能を、外から何かを補う
ことで刺激し続けることが安全だとは言えないような気がするのです。
CBDに関する私見としては、「医療として使うのは賛成だけど、嗜好品として使うのは危険」と思って
います。
これはCBDだけではありませんが、何かが流行った時、ただブームに乗るのではなく、しっかり自分で
調べて自分自身の判断基準を持つことが大事ですね。

協会顧問・地曳直子

職   業 一般社団法人日本インナービューティーダイエット協会 顧問 地と手 代表 国際食学協会 特別講師 一般社団法人日本オイル美容協会 理事
保 有 資 格
ブ ロ グ
得意ジャンル 脂質栄養学
趣   味

facebook