【専門家ナビ】高畑宗明先生

甘いもの大好きなカンジダ菌が体調不良の原因かも!?

 

細菌だけではなく、カビや酵母にも要注意

 

私たちの体には無数の微生物が共生しています。口の中は肌の上には1兆個程度、腸内には40〜100兆個とも言われる菌がいます(以前は1000兆個とも言われていましたが、現在はこのくらいの数が定説です)。これらの菌は、普段は感染防御や免疫の調整、神経の調整、ホルモンの合成など、私たちの体にとても大切な働きをしています。

 

一方、いわゆる悪玉菌が増えると、アレルギーや感染症、精神不安定、さらには自己免疫疾患やがんといった全身性の病気につながる恐れもあります。そのため、善玉菌を増やすこと、菌のバランスを保つことはとても大切です。

 

こうしたお話をする際に出てくる菌は「腸内細菌」、つまり「細菌」です。細菌には乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌、酢酸菌などの種類があります。一方、細菌よりもサイズが大きな菌も数多く存在しています。それが「真菌」です。真菌にはカビや酵母といった種類があり、実は細菌と比べて2〜10倍も大きく、細胞の構造も増え方も違います。

 

私たちの体に対する菌の健康効果や病気の話をする際には、主に取り上げられるのは細菌です。そのため、真菌と体との関係、さらには真菌と腸内環境についてはあまりデータがありません。しかし、カビや酵母は人間の体に共生している常在菌であり、増えすぎると病気を招くことがあります。今回は、代表的な酵母であるカンジダ菌について取り上げます。

 

糖質大好きなカンジダ菌は腸内環境の悪化の要因に

 

カンジダ菌は酵母の一種で、人の口から腸までの消化管や、膣、皮膚など様々な場所に住んでいます。赤ちゃんの頃には一時的にオムツかぶれの原因になったりしますが、成長するにつれてその数は減少し、20代の頃までは健康上の被害をほとんど与えることはありません。

 

しかし、年齢を重ねるにつれて免疫力が低下すると、カンジダ菌が増えやすくなります。また、カンジダ菌は酵母なので、元々糖分を好んでエサにして生育します。現代の食生活では甘い砂糖が大量に含まれたお菓子やジュース、精製された食品を口にする機会が増えており、カンジダ菌が増えやすい環境にあります。医療現場で使用される抗生物質や薬の使用も、カンジダ菌を増殖させる原因となります。さらに、40代以上になると口腔内の唾液量が低下して口の洗浄力が減少するため、口腔内のカンジダ菌が飲み込まれて消化管で増殖しやすくなります。

 

カンジダ菌の過剰増殖は、潰瘍性大腸炎やクローン病といった大腸に関連する炎症性疾患にも関係することがわかってきました。消化管だけでなく、喘息や関節リウマチが悪化する、メンタルが悪化するといった全身的な炎症性疾患に関わることも明らかになっています。腸の免疫バランスが乱れて腸の細胞が傷ついてしまうと、カンジダ菌が体内に侵入してしまい、全身の障害が起こると考えられています。乳酸菌やビフィズス菌をとっても体調が改善しない場合、カンジダ菌のような真菌が不調の原因の場合もあるのです。

 

カンジダ菌を予防する食品成分

 

カンジダ菌を抑えるためには、香り成分を多く含むシナモン、レモングラス、ミントなどのハーブが有効です。また、ワサビに含まれるイソチオシアネートも抗菌活性を示します。他にも、ライチ果実由来のオリゴノール、ココナッツオイルに含まれるカプロン酸、緑茶に含まれるエピカテキン、ウコンに含まれるクルクミンなども抗カンジダ菌活性を持っています。

 

また、食べ物だけでなく口腔ケアも大切です。口腔でカンジダ菌が増殖してしまうと、食べ物と一緒に消化管に定着する可能性があります。特に就寝前にしっかりと歯磨き習慣を持つことがカンジダ菌対策としては大切です。食べ物や生活習慣に気をつけることで、カンジダ菌の過剰な増殖を防ぐように心がけましょう。

 

(参考文献)

Med. Mycol. J. 55, 143-149 (2014)

Microbiol Res. 198, 27-35 (2017)

 

協会顧問・高畑宗明 博士

職   業 博士(農学) 岡山県岡山市出身。 岡山大学大学院にて博士号(農学)を取得。現在、腸内細菌や乳酸菌についての研究を続けている。 一般の方々や小学生への講演・食育セミナーを通じて、啓蒙活動を行っている。
保 有 資 格 【経歴】 株式会社バイオバンク 統括部長 博士(農学) 2009【年3月 岡山大学大学院(博士後期課程)卒業 博士(農学)取得 2013年〜14年 麻布大学共同研究員 【業績】 ・論文発表 M. Takahata et al, OM-X®, a Fermented Vegetables Extract, Facilitates Muscle Endurance Capacity in Swimming Exercise Mice. Nat Prod Commun. 12, 111-114 (2017) M. Takahata et al, Fermented vegetable and fruit extract (OM-X®) stimulates murine gastrointestinal tract cells and RAW264.7 cells in vitro and regulates liver gene expression in vivo. Integrative Medicine. 4, 1-5 (2017) M. Takahata et al, OM-X®, Fermented Vegetables Extract Suppresses Antigen-Stimulated Degranulation in Rat Basophilic Leukemia RBL-2H3 Cells and Passive Cutaneous Anaphylaxis Reaction in Mice. Nat Prod Common. 10, 1597-1601 (2015)
ブ ロ グ
得意ジャンル 【書籍執筆】 「腸内酵素力で、ボケもがんも寄りつかない」 講談社+α新書 「自分史上最高の腸になる! 腸で酵素をつくる習慣」 朝日新聞出版
趣   味

facebook