【専門家コラム】地曳直子先生

『遺伝子組み替え作物と油脂』
先日、『たねと私の旅』という映画の上映会を開催しました。
これは遺伝子組み換えに関するドキュメンタリー映画で、昨年各国の映画賞で様々な賞を受賞していま
す。日本では今年の4月に配給が開始され、各地で自主上映がスタートしたのですが、そのキックオフ
イベントで映画を見て衝撃を受けました。
正直それまでは、遺伝子組み替えは何となく悪そうだから、一応成分表示で『遺伝子組み換えでない」
というものを買うという程度でしたが、この映画をきっかけに調べてみて、遺伝子組み換え作物がいか
に私たちの体や地球環境に悪い影響を与えているかを知りました。
まず、遺伝子組み換え作物にはどんな遺伝子が組み込まれているかと言うと、農薬や除草剤をかけても
枯れない遺伝子(除草剤耐性遺伝子)や、虫を殺す遺伝子(害虫抵抗性遺伝子)。
除草剤に耐性のある遺伝子を組み込むことで、強い除草剤をまいても枯れません。今使われている除草
剤は主にグリホサートという成分で、これは植物がアミノ酸を産生する「シキミ酸経路」を阻害するこ
とで植物を枯れさせる薬です。私たち人間や動物にはシキミ酸経路がないので影響はないと言われてい
ましたが、実は腸内細菌にはシキミ酸経路があるため、グリホサート系の農薬を摂取すると腸内細菌に
大きなダメージを与えます。
一方の害虫抵抗性遺伝子組み替えは、Bt(Bacillus thuringiensis バチルス・チューリンゲンシス)と
いう土壌細菌が持つ毒素を発現する遺伝子を組み込まれた植物です。その植物を虫が食べると、Bt毒素
によって消化管が破壊されて死に至るというもので、食品でありながら殺虫剤としても登録されていま
す。
人間やその他の哺乳動物は消化液によってこの毒素を無害化するので影響はないと言われていましたが、
近年実は人間の腸でもタイトジャンクションを緩め、リーキーガットや過敏性腸炎の発症リスクを高め
ることが明らかになってきました。
多くの遺伝子組み換え作物は除草剤耐性と害虫抵抗性の両方を掛け合わせて、複数の農薬をかけても枯
れない、複数の虫を殺す毒素を持っているなどマルチスタックと言われるものです。
人が食べれば、いずれも腸内の環境を悪化させて腸炎やアレルギー性疾患、精神疾患など様々な疾患を
引き起こすことが近年の研究で明らかになっています。
遺伝子組み換え作物を栽培している主な国は、アメリカ(40%)、ブラジル(25%)、アルゼンチン(14%)、
インド(6%)、カナダ(6%)。この5ヶ国で世界の遺伝子組換えの91%を栽培しています。
アメリカは栽培だけでなく摂取量も世界一なのですが、実は6年ほど前から遺伝子組み換えに反対する
デモが各地で起こり、それ以降遺伝子組換えの栽培を禁止する自治体や遺伝子組み替え食品を扱わない
Non-GMマーケットが拡大し、消費量は減少しています。
一方で日本は世界一の遺伝子組み換え輸入国で、承認されている数も1位で318種類。(2位はアメリカ
の203種類、3位は韓国の167種類)
EUやロシアは遺伝子組み替えの規制が厳しく、アメリカでさえNon-GMOの動きが広がる中で、海外の
専門家からは「日本はGMOのゴミ捨て場になる」とまで言われてる状況です。
では、どのような作物が遺伝子組み換えで栽培されているかと言うと、実は大豆、トウモロコシ、綿、
菜種というたった4つの品種が世界の栽培量の99%を占めます。
これを聞くと、4つの植物を避ければ良いだけなので簡単そうに思いますよね。特に、綿は食べ物では
ないので、食品としては3種類だけ気をつければ良いと思われる方も多いと思います。
でも実は、この4つの植物に共通することがあります。それは油糧原料であること。大豆やコーン、菜
種はもちろん、コットンも綿実油という脂になります。
油は遺伝子組換えの表示義務がないので、日本で流通している大豆油、コーン油、キャノーラ油、綿実
油の99%は遺伝子組み換え原料です。これらを油単体で摂ることは少ないかもしれませんが、様々な加
工品に含まれているため、無意識に食べてしまっていることが多いです。
食品の成分表示に植物油と書いてあったら、ほとんどが遺伝子組み換えの油だと思って間違いないで
しょう。
また油以外では、果糖ブドウ糖液糖、コーンシロップ、デキストリン、みりん風調味料などの糖類も多
く作られます。これらも表示義務はありません。
植物油や糖類は、姿を変えて様々な食品に入っていますが、その中で私が一番衝撃を受けたのが粉ミル
クです。
国内の粉ミルクはほぼ全て遺伝子組み換えの大豆油かキャノーラ油が入っています。メーカーによって
はそれ以外にも遺伝子組み換えの大豆レシチン、大豆たんぱく、デキストリン、ブドウ糖などが入って
います。
油や糖は、遺伝子組み換え作物から作られてもBt毒素の影響はないとの事ですが、それは確実ではあり
ません。例えBt毒素を含まなくても、長い人類史上、遺伝子を組み替えるという不自然な植物を作り始
めてからまだ23年。長期的に食べてどのような害が出るかは誰も分かっていません。
一番大切な、生まれたばかりの赤ちゃんが飲むミルクにそんなものが入っているなんて、悲しくなりま
すね。
遺伝子組み換え食品に限らず、予防原則に則って危険性のあるものは国として規制するというヨーロッ
パやロシアと違い、日本では国としての規制ないものが多いので、意識しないと知らないうちに危険な
ものを口にしていることがあるかもしれません。
また私たち日本の消費者が無意識に遺伝子組み替えを購入することは、遠く離れた生産地の土地を農薬
で汚染させ、土壌の微生物を殺し、作物を枯れさせ、生物多様性を失わせることにも繋がります。
大切な家族を守るため、地球の環境を守るため、食べものの背景にも想いを巡らせて、毎日の食べもの
を選んでいきたいですね。

協会顧問・地曳直子

職   業 一般社団法人日本インナービューティーダイエット協会 顧問 地と手 代表 国際食学協会 特別講師 一般社団法人日本オイル美容協会 理事
保 有 資 格
ブ ロ グ
得意ジャンル 脂質栄養学
趣   味

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