「料理がしたくなる本」

「料理がしたくなる本」 津島よしえ
「トレイから取り出したくすんだピンク色のタラコ・・・皮をむくこともせず、フォーク
でぷつりぷつりと突き崩し麺に乱暴にまぶしていく。カルピスバターをナイフで思い切っ
て大きく切り取り、その上に載せた。淡い山吹がやわやわと色づいて横に広がり黄金色と
なって、輝く魚卵と混ざり合っていくのを、里佳はじっと見守った。」(「BUTTER」柚
木麻子より)
インナービューティプランナーの津島よしえです。
夏は大好きな季節ですが、暑い日は台所に立つのが億劫になり困ってしまいます。
料理はなるべく火を使わない、手軽に作れるものばかり選んだり、オーブンを使う焼菓子
を作らなくなったり・・・。料理に対する情熱が薄れてしまい、そこから抜け出せなくな
ります。
そんな時には、手にとると思わず料理したくなる本や写真集、観ると台所に立ちたくなる
映画のDVDがあると気持ちを切り替えてくれます。私にとってのそんな存在は柚木麻子さ
んの小説「BUTTER」です。

「BUTTER」は結婚詐欺の末、何人もの男性の財産と命を奪ったとされる容疑者の女性梶
井真奈子と、彼女を取材する女性記者町田里佳の物語。容疑者の女性は現在も刑務所で服
役中の木島佳苗がモデルと言われています。
冒頭の抜粋文のたらこパスタは、料理が苦手な理佳が作るズボラなものですが、色味のコ
ントラストが美しく、素材の香りのハーモニーが絶妙で、文字を追うだけでよだれが出そ
うなくらい美味しそうです。料理ってこういうのもアリで、肩の力をいつも入れて作る必
要はないのだと思わせてくれます。


小説の後半には、サロン・ド・ミユコという、裕福な女性しか通えないような高額で本格
的なフランス料理教室が登場します。小説のキーになる「ブフ・ブルギヨン(ブルゴーニ
ュの牛肉の赤ワイン煮)」は残念ながら登場しませんが、サロンでは、「スープ・ド・ポ
ワソン(魚介スープ)」「雲丹のブールブランソース」「ホワイトアスパラのオランデー
ズソース」など、手間がかかる本格フランス料理が次々と作られます。まるで料理本のレ
シピのように工程が詳しく描写されていて、本格的な作業の内容に驚かされますが、自分
もこんな風に丁寧に料理をしてみたいと思わせてくれます。

料理を作っている場面の他にも、料理に対する考えを述べる場面も沢山出てきますが、最
も共感した言葉を最後にご紹介したいと思います。
「たったこれだけのことで、今までにはなかった満ち足りた気持ちが味わえる。食べたい
ものを自分で作って好きなように食べる。これを豊かさと呼ぶのではないか。これまでは
、何が食べたいかさえ、よくわからなかったのに、キッチンに立つようになってからは、
ぼんやりとだが欲するものをイメージ出来るようになっている。」(「BUTTER」柚木麻
子より)

津島よしえ

職   業 インナービューティプランナー。インナービューティダイエットアドバイザー。食品衛 生管理責任者。
保 有 資 格
ブ ロ グ インスタグラム:https//www.instagram.com/yoshieee
得意ジャンル クイックレシピ・ロースイーツ
趣   味 ピラティス・旅行・フランス語・アロマテラピー

facebook