『五月病と油』
先日、日刊ゲンダイに「魚料理を週3回以上 ~うつ病を防ぐ食事で五月病を吹き飛ばす~」という記事
が載っていました。
五月病とは正式な病名でなく、連休明けのうつ状態や無気力、不眠のような精神症状全般を指す言葉で、
放っておくとうつ病や適応障害に進行してしまうケースもあります。
うつ病などの精神疾患の原因は様々で、全てが解明されてはいませんが、既存の向精神薬はセロトニン
やノルアドレナリンなどの神経伝達物質の伝達をスムーズにする作用のものばかり。
シナプス間の神経伝達機能の不具合でうつ症状が出ている場合は薬の効果が出やすいのですが、それ以
外の原因の場合には効果が出にくいのです。
うつ病や適応障害の他の原因としてよく知られているのが、神経伝達物質を作るための栄養素が不足し
て神経伝達物質自体が十分量作れていない状態です。この場合は、神経伝達物質の原料となるタンパク
質や、神経伝達物質を作る際に必要な酵素の補酵素・補因子となるビタミンB群やマグネシウムなどの
ミネラル類などを補う栄養療法で改善することが多いです。
そして、それ以外に近年注目されているのが炎症に起因するうつ症状。慢性炎症は生活習慣病やアレル
ギー、癌、糖尿病など様々な疾患の発症や進行に関わっていることは知られていますが、精神疾患や認
知症などの脳疾患にも深く関わっています。
先日の記事では「肥満やメタボがうつ病に悪いのは脂肪細胞が放出する炎症性サイトカインが全身の炎
症、脳の炎症(神経炎症)へ波及するため。その炎症を抑える栄養素が青魚に含まれる『DHA・EP
A』という『n―3系脂肪酸』なので、魚料理は週3回以上食べるようにした方が良い」とありました。
ただ、脳の炎症の原因となるのは肥大化脂肪細胞による炎症だけでなく、アレルギー疾患や腸の炎症、
歯周病などによっても引き起こされるので、うつ病などの精神疾患を改善させるためにも、まずは体に
起こっている慢性的な炎症を抑えることが重要です。
以前から、EPAは炎症を促進するアラキドン酸と拮抗することで抗炎症に働くと言われていましたが、
近年EPA、DHAからは更に強力に炎症を収束させる物質がそれぞれ作られていることが分かってきてい
ます。
代表的なものでは、EPAからはレゾルビンEシリーズや18-HEPEなど、DHAからはレゾルビンDシリー
ズやプロテクチン 、マレシンなどの炎症収束物質が作られ、体内の局所局所で炎症を収束させ、恒常性
を維持しています。
また、魚食とうつ病改善に関しては抗炎症や炎症収束以外にも、EPAやDHAによる免疫調整作用や神経
保護作用、神経伝達物質の生成促進など様々な作用があり、それらが複合的に合わさって抗うつ効果に
繋がると考えられています。
ゴールデンウィーク明け、なんだかやる気が出ないな~と無気力になったり、このままでいいのかな…
と鬱々とした気分になった時は、ぜひ積極的にお魚を食べてみてください。