【専門家ナビ】高畑宗明先生

「糖」の食べ過ぎは要注意!

抗糖化を意識して健康で美しい生活を

 

コラーゲンの老化は「糖化」が原因かも!?

みなさんは、酸化という言葉を一度は目にされたことはあるのではないでしょうか。酸化は体内で発生した過剰な活性酸素が、DNAを傷つけたり細胞にダメージを与えたりする現象です。抗酸化食品や抗酸化サプリメントなど、多くの製品が市場にあります。一方、近年注目されている新しいキーワードが「糖化」です。糖化についての特集も、いくつかTV番組で見られるようになりました。

 

糖化とは、体内の「糖(ブドウ糖)」が体の中のタンパク質と結合することで、タンパク質の働きを変化させてしまう現象です。糖がくっ付いたタンパク質は茶色く変化し、硬く・もろくなってしまいます。この時にできる成分を「AGEs(糖化最終生成物)」とよび、この反応を糖化といいます。加齢によってこの物質が蓄積することから、英語のage(エイジ)にちなんでAGEsと名付けられています。つまり、AGEsの蓄積は老化に大きな影響を与えています。

 

糖化が体内で進むと、どのような悪影響が起こるのでしょうか?糖化による見た目の変化としては、くすみ、ハリの低下、たるみなどがあります。また、人体のタンパク質の1/3を担っている「コラーゲン」の働きを低下させてしまいます。コラーゲンは肌の成分としても有名ですが、実は体内には10種類以上のコラーゲンがあり、骨や皮膚、軟骨、血管など全身に存在しています。

 

また、筋肉を作っている「エラスチン」もタンパク質です。筋肉は胃腸や血管、尿管などを調整する平滑筋として内臓に分布しています。このように、美容成分としても有名なコラーゲンやエラスチンなどのタンパク質が、糖化によって機能が低下してしまい、見た目年齢の悪化に加え、骨折や筋力低下、臓器の機能障害も進行させてしまう恐れがあります。さらに、脳のタンパク質の異常が原因とされるアルツハイマー型認知症も、糖化とのつながりが研究されています。

 

どのくらいの糖の摂取で悪影響があるの?

AGEsが体内で形成される最大の理由は、やはり「糖」です。特に、食後に血糖値を大きく上げてしまうような食品や食べ方は要注意。最近は「食後高血糖(グルコーススパイク)」という言葉もあり、食後の血糖値が140mg/dlを超えて上昇する状態になると、糖化をはじめ様々な病気のリスクを上げてしまうとされています。また、ジュースなどの清涼飲料水には、500mlのペットボトル一本あたり30〜40gのブドウ糖が含まれますが、その二本分くらいの量を摂取する試験では、糖化の原因となる物質が飲用後に顕著に上昇することも発表されています。お菓子やジュース、菓子パンやコーヒーなどに入れる砂糖など、気がつけば口にしている食品を合計すると、このくらいのブドウ糖量を毎日摂取している方も多いため要注意です。

 

体内のAGEs量の身近な指標としては、健康診断や病院採血などで糖尿病の指標に用いられる「HbA1c(エイチビーエイワンシー)」が挙げられます。これは、通常のヘモグロビンが長時間かけて高血糖状態にさらされた結果として、糖化反応を受けてできたものです。

 

糖化を予防する食べ方や生活習慣を意識しよう

では、糖化を防ぐにはどのような対策が有効なのでしょうか。もちろん、日々の生活習慣も大きな原因となります。喫煙は量が増えるごとにAGEs蓄積が増加しますし、お酒も3日に一合程度なら問題ありませんが、それを超えると血糖値に影響を与えます。睡眠時間も6時間以上は確保しましょう。食後60分後や120分後に運動を簡単に取り入れることも大切です。その時間に3分間階段の昇降を行うと、血糖値が低下することが発表されています。

 

また、直接的に糖化に影響を与える食後高血糖を防ぐことが大切です。野菜を先に食べる「ベジタブル・ファースト」はよく知られた方法です。米よりも先にキャベツを60g程度摂取すると、血糖値の上昇がゆるやかになります。また、実は肉や魚も米よりも先に食べると血糖値上昇やインスリン分泌を抑えることがわかっています。

 

他にも、柑橘類やヨーグルト・ファースト(プレーンタイプ)といったデータもあります。柑橘類のクエン酸やヨーグルトの乳酸が、胃の内容物の吸収をゆるやかにすることが理由です。さらに、うどんや米の場合、素うどんよりも温泉玉子やサラダを添加したうどん、白米のみより牛丼にした時の方が、血糖値変化がゆるやかです。ぜひ、血糖値を意識して日々の食べ方を工夫してみてください。

 

糖化反応自体を抑制する成分も色々と発表されています。カモミールや桜の花、マンゴスチンの果皮、ヨモギの葉、緑茶などには、フラボノイドという種類のポリフェノールが含まれており、抗糖化作用が認められています。さらに、リンゴも抗糖化作用が強いのですが、その働きは果皮に由来するため、皮ごと食べるのがポイントです。

 

一般的に、食品中にもAGEsが多く含まれているといわれています。食品中のAGEsを測定した書籍も販売されており、食事によって体内に取り込まれることが指摘されています。しかし、食品中のAGEsが直接体内のAGEsに関係するというデータはあまりなく、そこまで心配する必要もないでしょう。それよりは、ブドウ糖の過剰摂取による食後高血糖をいかに防ぐかが、抗糖化対策として欠かせないと考えています。

 

ただし、過剰な糖質制限ダイエットは危険です。糖質は健康な人にとっては欠かせない栄養素であり、糖は体内で細胞同士の情報伝達や、免疫にも深く関わっています。また、糖質を過度に制限して脂質からエネルギーを取りすぎるとケトン体という成分が生まれ、これがAGEsの産生に繋がることも知られています。全ての栄養素は偏ることが危険なので、何かだけと意識しすぎず、摂り過ぎないことに気をつけて楽しく食事から健康と美容を成功させましょう。

協会顧問・高畑宗明 博士

職   業 博士(農学) 岡山県岡山市出身。 岡山大学大学院にて博士号(農学)を取得。現在、腸内細菌や乳酸菌についての研究を続けている。 一般の方々や小学生への講演・食育セミナーを通じて、啓蒙活動を行っている。
保 有 資 格 【経歴】 株式会社バイオバンク 統括部長 博士(農学) 2009【年3月 岡山大学大学院(博士後期課程)卒業 博士(農学)取得 2013年〜14年 麻布大学共同研究員 【業績】 ・論文発表 M. Takahata et al, OM-X®, a Fermented Vegetables Extract, Facilitates Muscle Endurance Capacity in Swimming Exercise Mice. Nat Prod Commun. 12, 111-114 (2017) M. Takahata et al, Fermented vegetable and fruit extract (OM-X®) stimulates murine gastrointestinal tract cells and RAW264.7 cells in vitro and regulates liver gene expression in vivo. Integrative Medicine. 4, 1-5 (2017) M. Takahata et al, OM-X®, Fermented Vegetables Extract Suppresses Antigen-Stimulated Degranulation in Rat Basophilic Leukemia RBL-2H3 Cells and Passive Cutaneous Anaphylaxis Reaction in Mice. Nat Prod Common. 10, 1597-1601 (2015)
ブ ロ グ
得意ジャンル 【書籍執筆】 「腸内酵素力で、ボケもがんも寄りつかない」 講談社+α新書 「自分史上最高の腸になる! 腸で酵素をつくる習慣」 朝日新聞出版
趣   味

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