乳酸菌とビフィズス菌って違うの!?
正しく理解して快適プロバイオティクス生活
「プロバイオティクス」って何?
どんなに体に良いものを食べても、有効成分を吸収する腸が元気でないと効果はなかなか得られません。それだけではなく、腸は毒素や異物を排出して外敵から身を守るという大切な働きをしています。そんなとき、腸に住んでいる腸内細菌を整えて、善玉菌を活発に働かせることが必要です。
善玉菌を働かせるために、数多くのヨーグルトに乳酸菌が添加されて販売されています。さらに、最近はチョコレートや飲料、さらには冷凍食品やアイスにまで「乳酸菌入り」というキーワードを見かけるようになりました。このように、体に外から菌を取り入れることを「プロバイオティクス」といいます。「聞いたことはあるけれど、カタカナだから難しい」と感じられる方もいらっしゃるでしょう。そこで、プロバイオティクスについて、まず簡単に定義します。
「体の外から摂取することで、体に対して有益な効果をもたらす生きた微生物=プロバイオティクス菌」
ヨーグルトには生きた乳酸菌が含まれるため、ヨーグルトと一緒に体に乳酸菌を取り入れることでプロバイオティクス菌を摂取することができます。ここで、上の定義の中に「微生物」と書いた理由は、実は乳酸菌でなくても体に良い効果をもたらす菌は、広い意味でプロバイオティクスに当てはまるからです。納豆菌や酢酸菌なども、大きくはプロバイオティクスと定義されますが、一般的には「プロバイオティクス=乳酸菌」というイメージが強くあります。
乳酸菌ってどれも一緒じゃないの?
乳酸菌は主に食材に含まれる糖質(食物繊維など)を分解してグルコースなどの単糖にし、これを発酵して乳酸を作り出します。また、一部の乳酸菌は酢酸を一緒に作る場合もあります。酸性に保たれた腸内では悪玉菌が増殖しにくく、腸内細菌のバランスが整います。腸の酸性度が上がると、栄養素の吸収率も上昇します。その他にも、乳酸菌は生きて行く中でビタミン類などを作り出し、私たちの体に大切な成分を届けてくれます。さらに、乳酸菌には免疫力を高める作用があり、アレルギーの予防につながったり、整腸作用をもたらしたりしてくれます。
ただし、乳酸菌とひとことで言っても、実はその種類はかなり多くあります。2016年に発表された腸内細菌学会誌では、乳酸菌の数は300種類以上が登録されていると記載されています。また、乳酸菌とビフィズス菌も、実は住んでいる場所も効果も違います。大きく分類すると「ラクトバチルス菌」「ビフィズス菌」「コッカス菌」に形状や働きで分けられますので、簡単に説明していきます。
<ラクトバチルス菌>
主に小腸に住んでいるのは乳酸菌のうちラクトバチルス菌です。元々は乳製品や植物性の発酵食品などに多く含まれています。よく「動物性乳酸菌」「植物性乳酸菌」と定義されますが、分離された場所が違うだけで、本来こうした分類はありません。長細い棒状の形(桿菌といいます)をしていて、ヨーグルトなどに数多くの種類が添加されています。免疫を高める作用や、コレステロール低下作用に優れる種類があります。
<ビフィズス菌>
正式にはビフィドバクテリウムといい、主に大腸に住んでいます。人間の腸で善玉菌というと乳酸菌を思い浮かべますが、実は乳酸菌は多くても0.1%くらいで、ビフィズス菌が腸内細菌のうち10%くらいを占めている主要な善玉菌です。特に日本人の大腸には他国と比較してもビフィズス菌が多いことが特徴です。形もラクトバチルス菌とは異なり、枝分かれ状をしています。整腸作用や炎症を抑える作用に優れる菌があります。
<コッカス菌>
他の乳酸菌でも同様ですが、死んでしまっても効果が高いのがコッカス菌です。そのため加熱殺菌して販売されていることが多くあります。ラクトバチルス菌やビフィズス菌と比較して細胞の大きさが小さいことが特徴で、一度に多くの菌数を摂取することができます。ラクトバチルス菌と同様に、免疫を高める効果に優れています。
このように、乳酸菌にも多種類あり、住んでいる場所も効果も違います。さらに、それぞれの種類も数十種類存在し、もっと細かく分類されます。人間でいうと「親戚、家族、個人」のようなもので、菌でいうと「株」というのが個人にあたります。この株ごとに実は効果効能は異なるのです。市販の製品に「○○株」と記載されているのは、メーカーごとに独自の効果を持つ乳酸菌株を販売しているからです。
乳酸菌はどうやって選べば良いの?
「生きたまま乳酸菌を摂ると良い」というイメージが強いのですが、実は乳酸菌やビフィズス菌が腸まで届いて定着しているという結果はほとんどありません。外部から摂取する菌は、私たちの体にとっては「異物」であるため、体の免疫系によって排除されてしまうのです。この時に起こる一時的な免疫機能の活性化が、乳酸菌の効果なのです。また、生きて腸まで届いても、およそ数日滞在しただけで、便と一緒に出ていってしまいます。
ただし、乳酸菌を摂取することには意味があります。先ほどもお伝えしたように、乳酸菌は免疫を高める力に優れています。これは、乳酸菌の細胞を形作っているペプチドグリカンという細胞壁や、菌の表面にくっついている糖鎖、細胞の中にあるDNAやRNAなどの成分が免疫細胞を刺激するからです。つまり、死んでしまってもこうした細胞成分が残っていると、免疫に効果を発揮します。こうした細胞成分はコレステロールを吸着する作用も持っています。「生きたまま」ということにこだわらず、死んでしまっても効果を発揮するため、いろいろな発酵食品などから微生物を体に取り入れることも大切です。
一方、どの乳酸菌が自分に合っているかどうかは、食べてみないと分からないというのが正直なところです。「菌株」の細胞の成分と、自分の免疫細胞の相性もあります。ヨーグルトでいうと100〜200gを最低1〜2週間は続けて食べてみることが大切だといわれています。つまり、何かの菌だけにこだわるのではなく、満遍なくいろいろな食材から多種類の菌を取り入れて行くほうが、体全体の免疫力アップには効果的でしょう。
さらに、ヨーグルトだけを摂っても腸内環境の改善には繋がりにくいです。乳酸菌やビフィズス菌は、生きていく上で多くの栄養素を必要とするため、アミノ酸やビタミン・ミネラルも欠かせません。バランスの取れた食生活をなるべく心がけ、その上で乳酸菌を取り入れましょう。その点、発酵食品は菌が発酵中に作り出した多くの栄養素も含み、さらに発酵菌として活躍した乳酸菌、酵母、麹菌などの微生物(生菌や死菌)も摂取できる理想的な食品です。菌のエサになる食物繊維(水溶性・不溶性含む)や、オリゴ糖を含む大豆、タマネギ、ゴボウ、バナナなども上手に活用して、自分のお腹に住んでいる善玉菌も一緒に育てていきましょう。
(参考文献)
腸内細菌学会誌 30, 17-28 (2016)