【専門家コラム】菅原道仁先生

【問題】ボーっとしているときの脳は「活動している」でしょうか?「休んでいる」でしょうか?

 

正解は・・・ボーっとしている時も私たちの脳は、「活発に活動している」のです。

ワシントン大学のマーカス・E・レイクル教授が、2001年に安静時の脳活動に関して、私たちが何もしていないときに活発化する「デフォルトモードネットワーク」を発見しました。

私たちには、安静状態の脳でこそ働いている脳の領域があり、しかも、この活動に費やされているエネルギーは,私たちが喋ったり、手を動かしたり、じっと見るなどの意識的な行動に使われる脳エネルギーの20倍にも達しているのです。

デフォルトモードネットワークは、現在の研究では、内側前頭前野、後部帯状皮質・膨大後部皮質、左右の下部頭頂葉の4つの脳領域が関わっているのではないかと推測されています。

それでは、このデフォルトモードネットワークは、何のために働いているのでしょうか?このネットワークは、まだまだわからないことが多いのですが、自分自身について思い巡らせる「自己認識」や今自分がどこにいるか考える「見当識」や過去の出来事を覚える「記憶」に関連していると言われています。

そして、特に注目されているのは、「脳・精神の病気」との関連性です。

たとえば「アルツハイマー型認知症」においては、このデフォルトモードネットワークの働きが弱まっていることがわかっています。このデフォルトモードネットワークの働きを画像で捉えることができれば、認知症の超早期診断に使用できるのではないかと期待されています。また、「うつ病」や「統合失調症」でも、このネットワークの異常が見つかってきていて、さらなる研究が待たれています。

 

ボーっとしている時に働く不思議な脳の活動。この働きが解明できれば、たとえば、座禅やヨガなどの瞑想状態の科学的証明につながることでしょう。

そして、忙しい現代社会に生きている我々にとって、あえてボーっとする時間をもつことこそが脳の働きを健全にするコツかもしれません。

 

脳神経外科医 菅原道仁

職   業 菅原脳神経外科クリニック院長 杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院にて数多くの救急医療現場を経験。 外来診療は月に延べ1500人ほどを診察する時期もあったが、ひとりひとり責任をもって診察をするために2015年6月に八王子市内で小規模ながら大病院並みの検査機器を揃えたクリニックを開業。 「病気になる前にとりくむべき医療がある」との信条で、新しい健康管理方法である予想医学を研究・実践している。元・日本健康教育振興協会
保 有 資 格 脳神経外科専門医 体育協会公認スポーツドクター 抗加齢医学専門医
ブ ロ グ http://www.diamondblog.jp/official/michihito/
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