【専門家コラム】菅原道仁先生

「あ、名前なんだっけ・・・」、他人の名前を必ず覚える「2つのコツ」

 

初めて紹介された人やテレビの俳優さんの名前を覚えたのにもかかわらず、忘れてしまうことが多くなったと自覚する人は多いことでしょう。日々の生活の中で、一度で名前を覚えられたらどんなにいいことだろうと思ったことは、どなたでもあるはず。

 

しかし、そもそも私たちの脳は「覚える」よりも、「忘れる」ことが得意なのです。

 

それもそのはず、忘れることができなければ、忘れ去りたい悲しい出来事や恥ずかしい思いだけではなく、目に入る看板や電車の中で聞こえてきた会話、すれ違った人たちの顔など、どうでもいいことをすべて覚えることになり、脳が処理できなくなるのです。

 

ですので、私たちの脳は、記憶の中枢である海馬が、長い時間覚えるべき情報と忘れてもいい情報を選別しているのです。

 

私たちが自然に長期間覚えておける情報は、「命に関わる情報」です。たとえば大昔の人達は、「あそこの場所はマンモスが出るぞ」というような命に関わる情報をまず覚え、厳しい生存競争を勝ち残ってきたと考えられます。

 

人の名前はうっかり忘れても生き残ることができます。ですから、人の名前というものは、そもそも長期間の記憶に残りにくい情報なのです。

 

それでは、気になるアノ子の名前を長期間覚えておくにはどうすればいいか。それには2つのコツがあります。

 

1つ目のコツは「興味を持つ」こと。「アノ子の名前を忘れると死んでしまう」というロミオとジュリエットさながらの状況であれば、この記事を読むまでもなく、必ず覚えていることでしょう。しかし、すべてがそんな状況になるわけではないでしょうが、そう思い込むことはできるはずです。

 

記憶の中枢である海馬と感情の中枢である扁桃体は、隣り合わせにあり、お互いが密接に関連しています。すなわち、覚える対象が「興味がある」「大好きである」というものであれば、扁桃体の力を借りて海馬がパワーアップするのです。これは、実際に好きじゃなくてもいいんです。興味があると思い込み、好きだと思い込むことが大事なのです。

 

そして、2つ目のコツは「繰り返す」こと。繰り返し脳に入る同じ情報は、海馬が「命に関わる情報かも」と勘違いをするので、長期間覚えられるようになります。昔、英単語を繰り返し書いて覚えるという作業をしたと思いますが、これは脳のしくみとして、理にかなっているのです。

 

ですので、アノ子の名前を教えてもらったら、話しかけるたびに必ず「名前」で呼びましょう。面倒だからといって、熟年夫婦のように「ねえ」とか「あのさあ」とか、名前を思い出すことをサボってはいけません。気になるアノ子の名前は、恥ずかしがらずに名前で呼びましょう。

 

さらに、名前だけを覚えるのではなく、「イメージ」を付け加えるとさらに思い出しやすくなります。

 

たとえば、たんに「はなこさん」とだけ覚えるのではなく、「**会社のはなこさん」とか「赤い洋服のはなこさん」とか、なんでもいいので、名前のほかに1つ情報を付け加えましょう。何も情報が得られないときは、「漢字でどう書くの?」と聞くのも有効です。「はなこさん」よりも「花子さん」とか「華子さん」のほうが思い出しやすくなります。

 

私たちは覚えられないのではありません。思い出しにくくなっているのです。普段から、思い出せないからと言ってすぐにスマホで検索するのではなく、思い出す習慣をつければ、いざというときに役に立ちますよ。

脳神経外科医 菅原道仁

職   業 菅原脳神経外科クリニック院長 杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院にて数多くの救急医療現場を経験。 外来診療は月に延べ1500人ほどを診察する時期もあったが、ひとりひとり責任をもって診察をするために2015年6月に八王子市内で小規模ながら大病院並みの検査機器を揃えたクリニックを開業。 「病気になる前にとりくむべき医療がある」との信条で、新しい健康管理方法である予想医学を研究・実践している。元・日本健康教育振興協会
保 有 資 格 脳神経外科専門医 体育協会公認スポーツドクター 抗加齢医学専門医
ブ ロ グ http://www.diamondblog.jp/official/michihito/
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