【専門家コラム】地引直子先生

『エゴマ油としそ油』

エゴマ油としそ油、どちらが良いんですか?と聞かれることがありますが、実はこれらは同じもので、
しそ油として販売されているものも中身はエゴマ油です。
なぜエゴマ油をしそ油として販売しているかと言うと、まだ“エゴマ”という名前が一般に浸透していな
かった頃、エゴマ油として販売してもわかりにくいということや、ゴマ油と間違えられることがあるこ
とから、しそ油にしたそうです。

韓国では昔からエゴマ油はもちろん、葉もキムチにしたりお肉と合わせたりして日常的に食べられてい
ますが、確かに日本ではエゴマよりもシソの方が馴染みがある方がほとんどなので、シソ油と書いた方
がどの様な植物から搾った油なのか想像しやすいですね。
また、エゴマもシソも同じシソ科の植物なので、シソ油という名前も間違えでもありません。
でも実は日本でも、シソやゴマよりも、エゴマの方がずっと歴史が長いのです。
エゴマは縄文時代早期から日本中で栽培され、食用にしたり、食器や家具に防腐剤やニスの代わりに塗
るなど、生活に密着した植物でした。

エゴマの古名・漢名は“荏”で、東京の荏原など、この文字がつく地名のところはエゴマが自生していた
り、栽培されていた場所だと言われています。
こんなにも馴染み深かったエゴマですが、その後栽培が楽で豊富な油脂がとれる菜種やゴマが栽培され
るようになり、徐々にエゴマ栽培が減っていったのでした。
そのエゴマの実から搾られるエゴマ油が、近年の健康オイルブームで見直され、今ではまた日本各地で
栽培されるようになりました。

エゴマの実にはα-リノレン酸が豊富に含まれ、その含有量は、癌の栄養療法で世界的に使われている亜
麻仁油に勝ります。α-リノレン酸は体内で一部がEPAやDHAに変換され(DHAまで変換されるのはごく
わずかですが)、更に、血液の流れを良くしたり、アレルギーや炎症を抑える他、動脈硬化、脳・心臓疾
患、がん、糖尿病など様々な疾患のリスクを下げる機能性脂質に変換されます。
また、エゴマの実にはα-リノレン酸以外にも、抗腫瘍、抗炎症、抗アレルギー作用のあるルテオリンや
ロズマリン酸というファイトケミカルが含まれます。

ただこのファイトケミカル類は、油脂には移行しきらないので、α-リノレン酸とファイトケミカルをど
ちらも余すことなく摂るには、エゴマの実をそのまま食べるのがおすすめです。
自然食品店など乾燥した状態で販売されていますので、ゴマと同じように軽く煎ってから擦って青菜を
和えたり、お味噌汁に入れるのがお勧めです。。またゴマと違って外皮が薄く柔らかいため擦らなくて
も吸収出来ると言われているので、粒のまま醤油漬けにしてごはんや納豆に混ぜたり、お料理の味付け
にお醤油がわりに使うと、プチプチとした食感で美味しいです。

また秋の初め頃スーパーなどでも出回る紫蘇の穂の種の部分もエゴマと同じ成分を含み、この時季に紫
蘇の穂をお塩やお醤油につけておくと、通年使うことができるのでお勧めです。ぜひお試しください。
昔から「エゴマを食べると10年長生きする」と言われ、一部の地域では“じゅうねん”とも呼ばれるよう
に、成分的に見ても食歴の長さから見ても、日本人の健康を支える貴重な植物です。ブームで終わらず、
エゴマの栽培と食習慣が太古のように定着し、先祖が繋いで来た植物の種を未来へと繋げていければい
いな、と思います。

協会顧問・地曳直子

職   業 一般社団法人日本インナービューティーダイエット協会 顧問 地と手 代表 国際食学協会 特別講師 一般社団法人日本オイル美容協会 理事
保 有 資 格
ブ ロ グ
得意ジャンル 脂質栄養学
趣   味

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