皮脂が多いからニキビができる!?
きちんと理解して最適な肌ケアを!
アクネ菌は「いるだけで」肌の悪玉菌になるの?
ニキビは「皮脂が多いからできる」と思われがちですが、たとえ皮脂が多くても、毛穴の中に溜まらなければニキビはできません。皮脂には皮膚からの水分の蒸発を防ぎ、外部刺激から皮膚を守る役割があり、皮脂不足は肌の乾燥にもつながります。また、「アクネ菌(Propionibacterium acnes)がニキビの原因菌だから殺菌した方が良い」と思われがちですが、アクネ菌は皮膚の常在菌であるため、単純に殺菌することは肌に悪影響を及ぼします。
アクネ菌は肌表面のバランスを正常に保つことに貢献している菌でもあり、更に最近の研究では、ニキビが無い人の皮膚の上にもアクネ菌が多数存在していることが分かっており、同じアクネ菌といってもニキビを起こすタイプとそうでないタイプ(菌株)がいると考えられています (※1、※2)。
では「皮脂」と「アクネ菌」という、どちらも肌にとって必要な成分や菌たちが、なぜニキビを作る原因になってしまうのでしょうか。実は、ニキビができる原因は、毛穴の出口の角質が厚くなる(角質肥厚を起こす)ことにあります。角質が厚くなりすぎて、毛穴を塞ぐようになり、皮脂が詰まってくるのです。そして、毛穴に詰まった皮脂を栄養源として、悪いタイプのアクネ菌が過剰に繁殖することで炎症が起き、ニキビは悪化してしまいます。
つまりニキビを解決するためには、皮脂分泌や毛穴の角質肥厚に影響を与えるホルモンや、アクネ菌の活動に影響を与える免疫といった、体内バランスの乱れを整えることが大切です。ストレスや睡眠不足、運動不足、食生活の乱れなどは、体内バランスを悪化させてニキビの原因となるため要注意です。
ストレスケアや睡眠の確保が肌ケアにとっても大切!
ストレスは心身を緊張した状態にします。すると自律神経において、交感神経が副交感神経よりも優位になります。また、ストレスを強く感じている人の群の方が、感じていない人の群よりも好中球が多いことも報告されています。好中球とは、免疫細胞の一種でウイルスや細菌を退治する役割を担っていますが、過剰に作られると体を傷つけてしまう恐れがあります。交感神経が有意な状態が好中球の増加を招き、炎症性の反応を起こしやすくしている可能性を示す論文もあります。その為、ストレスによる免疫系の低下や好中球の増加がニキビの悪化に関係していると推測されます。(※3)
睡眠不足になると、肌のターンオーバーのサイクルが乱れます。すると、肌の新陳代謝が進まなくなり、古い角質が肌に残ってしまい厚みを増す「過角化」を招き、結果的にその周辺の毛穴は詰まってしまいます。更に、肌の免疫力も下がり、アクネ菌の増殖を起こします。そのため、ニキビができやすくなるだけでなく、炎症性ニキビの原因になります。きちんと規則正しく睡眠をとることが重要です。
食生活を整えて腸からもニキビ対策を!
食生活の改善もニキビの改善には重要です。皮脂分泌には食事の内容も関わっています。脂質の多いものだけではなく、糖質は皮脂腺を刺激する作用があるため、摂り過ぎると必要以上に皮脂分泌を増やしてしまいます。
また、高GI食は食後の血糖値を急速に上昇させます。血糖値を下げるために分泌されるインシュリンにも、男性ホルモンを刺激する作用があるため、高GI食に偏ると皮脂量が増えていきます。
ビタミンB2とB6は、皮脂分泌をコントロールする働きをし、不足すると皮脂の過剰分泌を起こす場合もあります。ビタミンB2はヨーグルト、カマンベールチーズ、レバー、ウナギ、納豆、マイタケ、海苔、たまご、アーモンドなどに多く含まれ、ビタミンB6はニンニク、レバー、豚肉、マグロ、サンマ、サツマイモなどに多く含まれます。
また、亜鉛は体内に存在する200種類以上の酵素の働きを支える大切なミネラルです。これが不足すると新陳代謝が満足に行えなかったり、免疫機能が低下したりする場合があります。この亜鉛の体内量が、ニキビの発生や悪化に関係があるということを示す論文があります。(※4) 亜鉛はカキ、ホタテ、ウナギ、チーズ、レバー、卵、大豆、抹茶、カシューナッツ、ゴマなどに多く含まれるので、不足しないように摂取すると良いかもしれません。
ニキビと腸内環境の関係について調べた論文もあります。(※5)論文によると、ニキビに悩む人には便秘などの消化器系の悩みを抱えている場合が多く、ニキビ患者の54%に腸内フローラの異常がみられたそうです。更に、プロバイオティクスにはニキビを治す効果があると書かれています。つまり、腸内環境が悪化すると、腸で作られた毒素が体内に流れだし、全身に慢性的な炎症を起こしてしまい、ニキビなどの肌トラブルを引き起こしうるということです。腸内環境を改善していくことが、ニキビ改善につながるかもしれません。(※6、※7)
※1:Journal of Investigative Dermatology 133, 2152-2160 (2013)
※2:Scientific Reports (2016)
※3:日本化粧品技術者会誌 42, 22-29 (2008)
※4:BioMed Research International 2014 (2014)
※5:Gut Pathogens 3 (2011)
※6:腸内細菌学雑誌 22, 1–5 (2008)
※7:名古屋女子大学紀要