【専門家ナビ】高畑宗明先生

 

乳酸菌だけが本当に善玉菌!?

腸内フローラ解析で腸の全容を解明!

 

乳酸菌だけでは不十分?

腸内細菌全体を整える「バランス調整菌」

 

みなさんが、腸の善玉菌と言われてすぐに思いつくのは「乳酸菌」ではないでしょうか。でも、実は乳酸菌は人間にそれほど多く住んでいません。また、乳酸菌とビフィズス菌は同じ種類のように扱われますが、乳酸菌は主に小腸に住んでいて、ビフィズス菌は大腸に住んでいます。遺伝学的にみても全く異なる菌で、親戚にも該当しないのです。そして、大腸に住むビフィズス菌は、なんと1万倍以上も乳酸菌より数が多いことがわかっています。もちろん、乳酸菌には免疫を高める効果もあり大切な菌です。でも、腸内細菌叢全体をみる上では、もっと広く色々な菌のことを知っておくことが大切です。

 

今、最新技術によってこれまで分かっていなかった腸内細菌の全容が判明しつつあります。人の大腸には100〜1000種類、1000兆個ともいわれる微生物が共生しています。これまで善玉菌=乳酸菌という考えが主流でしたが、無数の腸内細菌のバランスを整えるために、もっと多くの微生物たちが協力して働いています。そして、各種の腸内細菌を、腸全体のバランスを整える「バランス調整菌」、感染によって病気を引き起こす「バランス撹乱菌」、未だに役割が不明な「能力未知菌」として新たに分類する研究者もでてきました。以下に代表的なバランス調整菌を記載しました。特に、「フィーカリ菌」と呼ばれるFaecalibacterium菌は腸の炎症を抑える重要な菌として大注目されています。

 

代表的なバランス調整菌たちを紹介します

 

・ビフィズス菌(平均的な存在割合:3〜14%、持っている人:98%)

バランス調整菌のうち、ヒトで最も多い菌で、便秘を改善する効果など腸内環境を整える機能を持つ。一部のビフィズス菌は食物繊維を分解することで酢酸を作り出し、この酢酸が腸内のバリア機能を高めることで腸管出血性大腸菌O-157の毒性を抑える効果を持つ。

 

・フィーカリ菌(平均的な存在割合:3〜13%、持っている人:95%)

クローン病や潰瘍性大腸炎など、腸が炎症を起こしてしまう患者ではフィーカリ菌が減少していることが知られている。最新の研究では、フィーカリ菌が短鎖脂肪酸の酪酸を合成することで、腸管組織の異常な炎症を抑制していることが多数報告されている。

 

・乳酸菌(平均的な存在割合:0〜0.01%、持っている人:45%)

バランス調整菌として腸内環境を整える効果が確認されているが、主に小腸に生息しており数は非常に少ない。腸管出血性大腸菌、赤痢菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなど様々な病原菌に対する抗菌作用を持つ。

 

・エクオール産生菌(平均的な存在割合:0〜0.02%、持っている人:50%)

エクオール産生菌は大豆などに多く含まれるイソフラボンを元に、エクオールという物質を作り出す。エクオールはエストロゲンに似た働きをするため、更年期障害を含むホルモンが関係する病気を予防する効果が期待されている。

 

・フラジリス菌(平均的な存在割合:0〜0.25%、持っている人:50%)

精神疾患モデルマウスを用いた研究で、フラジリス菌の存在によって脳に働きかける化学物質が腸内細菌叢によって作り出され、症状が緩和されることが明らかになっている。

 

・アッカーマンシア菌(平均的な存在割合:0〜0.01%、持っている人:35%)

痩せ型の人に多く、肥満の人に少ないことが知られている。マウスを用いた研究で、アッカーマンシア菌が体脂肪の増加を抑えることが明らかになっている。

 

・痩せ菌(平均的な存在割合:0〜0.09%、持っている人:60%)

痩せ型の人に豊富に存在することが知られている菌。最近の研究で、痩せ菌の一種であるミヌタ菌が存在することで、腸内細菌叢の構成が肥満型から痩せ型に変化し、体脂肪率や体重が減少することが報告されている。

 

腸内細菌の多様性が低くなることが

腸の状態を悪化させる要因です

 

さて、「腸内環境が良い」とはどのような状態を指しているのでしょうか?ここで大切な考え方が「多様性」です。もちろん病原菌の感染によって体調を崩すこともありますが、多くの腸に起因する病気は腸内細菌の多様性が低くなっていることがわかっています。つまり、健康な腸では腸内細菌の数が多く、さらに種類が多く均質であり、フィーカリ菌のような炎症を抑える菌が多いことが特徴です。一方で、花粉症やアレルギー、炎症性腸疾患などを抱えている方は、腸内細菌の数が減り、種類も減少して偏り、炎症を抑える菌が少なくなっていることがわかっています。

 

自分の腸内細菌がどういった状態であるかは、個人向けのサービスとして「腸内フローラ解析」によってみることができます。キットをインターネットで購入し、採便キットで採取した検体を輸送すると、1ヶ月ほどで結果が通知されます。そこには以下のような検査結果が掲載されていますので、ご自身の腸のバランスや多様性をみることができます。色々な会社がサービスを提供していますので、ぜひ自分の腸をしるために活用してみてください。

 

<腸内細菌叢解析で何がわかるの?>

“ウンログ”や“サイキンソー”など、腸内細菌叢解析を実施している会社が増えてきています。相場は18,000円と少し高額ですが、得られる情報は豊富です。

 

・腸内細菌のバランス評価

「バランス調整菌」「バランス撹乱菌」「能力未知菌」のバランスが分かります。また、それぞれの内訳もわかるため、ビフィズス菌やフィーカリ菌、エクオール産生菌、痩せ菌などが、自分の腸に何%いるかを知ることができます。

 

・腸内細菌の多様性評価

腸内細菌のバランスが悪くなると、菌の数や種類が減少し、多様性が低くなります。多様性が低いと特定の菌種だけが暴走したり、必要な成分が作られなくなったりすることも。検査によって、自分の腸の多様性の数値がわかります。

 

・腸内細菌の太りやすさ評価

腸内細菌を大きく分類すると、エネルギーを作りやすい「ファーミキューテス(F)」と、作りにくい「バクテロイデーテス(B)」に分類されます。この比率を見ることで、食事を食べた際の太りやすさを算出でき、F/B値として比率が表されます。

協会顧問・高畑宗明 博士

職   業 博士(農学) 岡山県岡山市出身。 岡山大学大学院にて博士号(農学)を取得。現在、腸内細菌や乳酸菌についての研究を続けている。 一般の方々や小学生への講演・食育セミナーを通じて、啓蒙活動を行っている。
保 有 資 格 経歴】 株式会社バイオバンク 統括部長 博士(農学) 2009【年3月 岡山大学大学院(博士後期課程)卒業 博士(農学)取得 2013年〜14年 麻布大学共同研究員 【業績】 ・論文発表 M. Takahata et al, OM-X®, a Fermented Vegetables Extract, Facilitates Muscle Endurance Capacity in Swimming Exercise Mice. Nat Prod Commun. 12, 111-114 (2017) M. Takahata et al, Fermented vegetable and fruit extract (OM-X®) stimulates murine gastrointestinal tract cells and RAW264.7 cells in vitro and regulates liver gene expression in vivo. Integrative Medicine. 4, 1-5 (2017) M. Takahata et al, OM-X®, Fermented Vegetables Extract Suppresses Antigen-Stimulated Degranulation in Rat Basophilic Leukemia RBL-2H3 Cells and Passive Cutaneous Anaphylaxis Reaction in Mice. Nat Prod Common. 10, 1597-1601 (2015)
ブ ロ グ
得意ジャンル 【書籍執筆】 「腸内酵素力で、ボケもがんも寄りつかない」 講談社+α新書 「自分史上最高の腸になる! 腸で酵素をつくる習慣」 朝日新聞出版
趣   味

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