【専門家ナビ】高畑宗明先生

体を支えるだけじゃない⁉︎ 

骨が作り出す若々しい免疫力!

 

1年かけて全身にある骨の

約5分の1が入れ替わっています

 

私たちの体は、骨によって支えられています。その数はなんと約200個。骨は体を支えるだけでなく、手足などの動きをつくり、脳や内臓などを守っています。骨は生涯を通じてつねに生まれ変わっています。

 

骨には「骨芽細胞(骨を作る細胞)」と「破骨細胞(骨を壊す細胞)」の2つの異なる細胞があります。体内のカルシウムの99%は骨に貯蔵されていますが、筋肉の動きや情報の伝達に必要な血液中のカルシウムが不足すると、破骨細胞が活性化されて骨からカルシウムを取り出します。そして、骨を壊した分だけ骨芽細胞が働くことで新しく作りだされ、骨は元どおりに修復されます。若い人では1年に全身の骨の約5分の1が入れ替わるとも言われています。

 

骨をきちんと作り続けるために

運動をして筋肉を鍛えましょう

 

骨を作る骨芽細胞は、運動などの刺激を受けて骨の形成をはじめます。このため、筋肉をきたえると、その筋肉がついている骨も太くなります。反対に、運動量が少なくなり、寝たきりになってしまうと、骨の形成がおいつかず骨量が減少します。また、この骨のバランスはホルモンや他の組織・細胞によっても複雑に制御を受けて保たれており、このバランスが崩れると骨粗しょう症といった骨折しやすい状態になってしまいます。

 

「若さを作り出す臓器」として

「骨芽細胞」が大注目されています

 

これまで体を支えることが役割と考えられてきた骨ですが、実はもっと多くの働きを担っていることが明らかになってきました。特に骨芽細胞は、「若さをつくりだす臓器」として大注目されています。それは、骨芽細胞が全身の免疫力を活性化する働きがあることがわかってきたからです。

 

なぜ、骨と免疫が関係しているのでしょうか?実は、私たちの全身を巡っている免疫細胞は、主に骨の中にある「骨髄」で生み出されています。腸に集まる全身の70%もの免疫細胞も同じです。

 

免疫細胞には、樹状細胞やマクロファージ、T細胞やB細胞といったさまざまな種類がありますが、こうしたすべての免疫細胞は、骨髄の中にある「造血幹細胞」という、たった1種類の細胞から分裂して増殖し、変化していきます。こうして変化して成熟した各免疫細胞が、ウイルスや病原菌と戦い、私たちの体を異物から守ってくれています。つまり、骨は免疫を活性化する上でとても大切な役割を果たしているのです。

 

骨のホルモン「オステオポンチン」が

免疫力を高め若さを保ちます

 

「若さをつくりだすカギ」とされている骨芽細胞のなかでも、この細胞が生み出す「オステオポンチン」というホルモンが注目されています。このホルモンは、骨髄の中で免疫細胞を産み出す造血幹細胞の機能を若く保ち、全身の免疫力を活性化することが発表されました。ドイツの研究チームの実験によると、造血幹細胞にオステオポンチンを加えたマウスでは、5ヶ月経過後に免疫細胞の量が2倍近くにまで増加していました。その逆に、オステオポンチンがなくなると、免疫細胞の量が減ってしまうと考えられます。

 

一方で、オステオポンチンが作られすぎると慢性炎症が起こり、老化が進むという研究結果もあります。日常の運動レベルで過剰にこのホルモンが合成されるわけではないため、適度に骨を刺激したり筋肉を維持したりすることで骨の生まれ変わりを促すことは、免疫力を高めて若さを保つことにもつながるのです。

 

カルシウムの吸収や沈着を助ける

ビタミンDとビタミンKを摂取しよう

 

骨の形成に欠かせない栄養素は、カルシウムだけではありません。ビタミンKやビタミンDも大切な働きをしています。ビタミンDは、日光を浴びると皮膚で作り出せるビタミンです。腸でカルシウムの吸収を促すことで、骨にカルシウムを届けて沈着する手助けをしています。また、ビタミンKは血液の凝固に関係している栄養素ですが、実は血液中に取り込まれたカルシウムを骨に取り込む働きを担い、破骨細胞の働きを助けることが知られています。

 

ビタミンDは食品としてはサケ、イワシ、サンマなどの魚類や、キノコ類に多く含まれています。近年の研究では、ビタミンDはカルシウムの吸収を促して骨を健康に保つだけでなく、直接的に全身の免疫を活性化することも数多く報告されています。また、ビタミンDの摂取により腸内の善玉菌が増加し、メタボリック症候群を改善することも発表されています。しかし、厚生労働科学研究による調査で、調査対象女性の半数以上が「ビタミンD不足状態にある」と報告されています。また、血中のビタミンD濃度が低い人は、骨折のリスクも多いという結果もあるため、骨の健康のためにも不足には注意が必要です。

 

ビタミンKは特に納豆に多く含まれています。他にもホウレン草や小松菜がおすすめです。ビタミンKは納豆菌が大豆を発酵することで生み出されます。それと同じように、腸に住んでいる腸内細菌の力で、腸の中でもビタミンKが作られています。外から栄養素を摂取するだけでなく、腸内細菌を元気にすることでも色々なビタミンを作り出すことができます。つまり、腸の善玉菌を増やす食生活は、結果として骨の健康維持、さらには免疫力アップを通じて若々しい体づくりにもつながるのです。

 

(参考文献)

Immunity. 44, 1434-1443 (2016)

Nature Rev Rheumat. 5, 667-676 (2009)

Metabolism. 69, 76-86 (2017) など

協会顧問・高畑宗明 博士

職   業 博士(農学) 岡山県岡山市出身。 岡山大学大学院にて博士号(農学)を取得。現在、腸内細菌や乳酸菌についての研究を続けている。 一般の方々や小学生への講演・食育セミナーを通じて、啓蒙活動を行っている。
保 有 資 格 【経歴】 株式会社バイオバンク 統括部長 博士(農学) 2009【年3月 岡山大学大学院(博士後期課程)卒業 博士(農学)取得 2013年〜14年 麻布大学共同研究員 【業績】 ・論文発表 M. Takahata et al, OM-X®, a Fermented Vegetables Extract, Facilitates Muscle Endurance Capacity in Swimming Exercise Mice. Nat Prod Commun. 12, 111-114 (2017) M. Takahata et al, Fermented vegetable and fruit extract (OM-X®) stimulates murine gastrointestinal tract cells and RAW264.7 cells in vitro and regulates liver gene expression in vivo. Integrative Medicine. 4, 1-5 (2017) M. Takahata et al, OM-X®, Fermented Vegetables Extract Suppresses Antigen-Stimulated Degranulation in Rat Basophilic Leukemia RBL-2H3 Cells and Passive Cutaneous Anaphylaxis Reaction in Mice. Nat Prod Common. 10, 1597-1601 (2015)
ブ ロ グ
得意ジャンル 【書籍執筆】 「腸内酵素力で、ボケもがんも寄りつかない」 講談社+α新書 「自分史上最高の腸になる! 腸で酵素をつくる習慣」 朝日新聞出版
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