『世界に誇る国産オイル ~米油~』
前回は、植物油を選ぶポイントとして脂肪酸組成とその他の微量成分(ビタミンやファイトケミカルな ど)を知ることが重要であること、またその例として、米油は脂肪酸組成はそれほど優秀ではないもの の、微量成分が大変優れているというお話をしました。
米油に含まれる3つの有効成分は、
1植物ステロール 2トコトリエノール 3γ(ガンマ) -オリザノール
今回は3のγ-オリザノールについてお伝えします。 γ-オリザノールは米ぬかや胚芽に含まれまる米特有の機能性成分なので、もちろん玄米そのものにも含 まれますが、脂溶性なので米油や米胚芽油に多く含まれます。
γ-オリザノールは脳や神経に対する作用や脂質異常症改善、抗炎症、抗アレルギー、抗酸化、皮膚炎改 善、美白など多岐にわたる様々な作用があり、γ-オリザノール製剤という医薬品にもなっています。 γ-オリザノール製剤が処方される疾患としては、主に高コレステロール血症や高トリグリセリド血症な どの脂質異常症、自律神経失調症、更年期障害、過敏性腸症候群などです。
γ-オリザノールは脳の視床下部に働きかけ、自律神経を安定させたり、不安障害や抑うつを改善させる 作用があります。また、ホルモンバランスの乱れからくる更年期障害を改善させる作用が臨床で多く認 められています。 脂質異常症においても、LDLコレステロールの低下作用および、コレステロールが動脈内皮に蓄積され るのを防ぐため、プラークの生成抑制にも働きます。 一般的な化学合成された医薬品では、不安障害やうつ病の薬が脂質異常症に効果があったり、更にアレ ルギーを改善させるというような多岐にわたる作用を持つものはないので、この自然界の成分はかなり 独特であることが分かります。 また強力な抗酸化作用を持つことから、食品添加物としても使われています。
外用としても、皮膚の微小血管の血流を改善させて皮膚温を高めるため、冷え性の方は米油で手足の マッサージをすることともお勧めです。 以前、極度の冷え性の方にお勧めしたところ、結構不良でボロボロになってしまっていた爪がピンク色 の艶やかな爪に戻ったとのご報告をいただきました。 また皮脂腺賦活作用があり、アトピー性皮膚炎や乾皮症患者を対象にした研究では、γ-オリザノールを 1%混ぜた軟膏を塗布して12週目には7~8割の患者の症状が改善したというデータもあります。 乾燥肌でお悩みの方や乾燥性の湿疹がある方はスキンケアに米油を使うと改善しやすいです。 更に、メラニンを生成させる酵素であるチロシナーゼの活性を阻害するため、メラニン生成が抑止さ れ、シミを防いで美しい白いお肌に導いてくれるため、化粧品にも配合されています。
このように、γ-オリザノールは食用でも外用でも非常に多くの作用が認めたれている成分です。 でもその割に、機能性成分としては知名度が低いと思われるかもしれません。
実はそれには薬事法の問題があります。 γ-オリザノールは医薬品になっているので「食薬区分」という括りに入ります。食薬区分だと、食品と しての機能性を謳うことが出来ないと法律で決まっているため、トクホ(特定保健用食品)も機能性表示 食品も取ることが出来ないのです。このことが、γ-オリザノールというお米特有の素晴らしい成分が一 般にあまり知られていない原因であり、とても残念でもあります。
γ-オリザノールは他の微量成分と同様、製造過程で消失されやすく、溶剤抽出法でつくられた米油と圧 搾法で搾られた米油では、圧搾法の方がγ-オリザノールの含有量がなんと20~25倍にもなります。 市販されている米油のほとんどが溶剤抽出ですが、米油の効能を余すところなく享受するには、圧搾法 を選ぶことをお勧めします。 1日の摂取量で言うと、例えば自律神経失調症や更年期障害でγ~オリザノール製剤を処方された場合の 摂取量は30mg~40mgで、これは圧搾法の米油なら小さじ2~3杯で摂取することが出来ます。 まさに薬食同源ですね。
米油にはγ-オリザノール以外にも、前回お伝えしたトコトリエノールや植物ステロールも含まれていて、 食べても塗っても、健康や美しさをもたらしてくれるオイルです。 脂質の知識がないと、たかが油と思われがちですが、毎日使う油が遺伝子組換え作物を溶剤抽出したサ ラダ油なのか、それとも米ぬかを圧搾した米油なのかでは、体に与える影響は大きく違います。
健康オイルとして世界的に有名なのはオリーブオイルですが、米油はそれに引けを取らないオイルです。 太古から私たち日本人の健康を支えてきてくれたお米の力を、糠から搾られる油を通して再確認しても らえたら嬉しいです