『世界に誇る国産オイル ~米油~』
オイルを選ぶ時のポイントとして、脂肪酸以外の微量成分(ビタミンやファイトケミカルなど)を知っ ておくことも大切です。
脂肪酸組成で選ぶのが一般的ですが、オイルによっては、その植物特有の微量成分を含むことがあり、 それによってオイルの味や香りだけでなく、体内での働きも違ってきます。
前回ご紹介しましたが、同 じオメガ3系オイルでも亜麻仁油と荏胡麻油の味が全然違うのは、含まれるファイトケミカルによるも のです。
オリーブオイルのピリッとした辛味や爽やかなグリーンの風味も、オリーブ独特のファイトケ ミカルを含むためです。
ファイトケミカルは、植物が虫や動物に食べられない様にするために自ら作り 出す成分なので、
辛い、苦い、渋い、香りが強いという、動物にとって刺激的なものがほとんどなので、 その様な成分を含むオイルは独特な風味のものが多いです。
しかし、とても強力な成分を含みながらも、ほとんど無味無臭のオイルがあります。
それが米油です。 米油、もしくは米ぬか油と呼ばれるものもありますが、どちらもお米の糠の部分から作ったオイルです。
健康効果が高いオイルとしてテレビや雑誌などに取り上げられて一時期ブームになったので、使ったこ とのある方もいらっしゃると思います。
米油の特徴は3つの素晴らしい成分を含むこと
①植物ステロール ②トコトリエノール ③γ-オリザノール
①の植物ステロールは、フィトステロールとも呼ばれ、コレステロールと似た構造の脂質です。
コレス テロールが動物の細胞膜構成成分なのと同じく、植物ステロールも植物の細胞膜構成成分です。
食事で 植物ステロールを摂ることでコレステロールの吸収が抑えられ、血中のコレステロール値が改善される ことから、特定保健用食品成分として認められています。
コーン油や菜種油、アボカドオイルにも豊富 に含まれrますが、米油の含有量がトップです。
②のトコトリエノールはビタミンEの一種です。
通常ビタミンE=トコフェロールと捉われがちですが、 厳密にはビタミンEは8種類あります。
大きくはトコフェロールとトコトリエノールに分けられ、更に それぞれα、β、γ、δの4種類あるので、
合計8種類がビタミンEファミリーと呼ばれます。
ただ、 食品に含まれるビタミンEのほとんどがトコフェロールなので、ビタミンE=トコフェロールとなってい ますが、実はトコトリエノールはトコフェロールの40~60倍の抗酸化作用があることから「スーパービ タミンE」と言われています。
ビタミンEの抗酸化作用は、細胞を健全に維持するためにとても重要です。
私たちの細胞膜には活性酸 素によるダメージを受けやすい不飽和脂肪酸が含まれていて、
ビタミンEが不足した状態では、細胞膜 の1箇所が酸化してしまうと隣り合うリン脂質まで酸化させて膜状で酸化が広がる「連鎖的過酸化反 応」が起こってしまうのですが、
ビタミンEがあることで連鎖を止めることができます。
そして、その 細胞膜の酸化を止めるスピードが、トコフェロールよりトコトリエノールの方が早いことも分かってい ます。
とても優秀な成分ですが、残念ながらトコトリエノールを含む食品はごくわずかで、米油やパー ム油、小麦胚芽以外にはほとんど含まれていません。
米油はトコトリエノールを豊富に含む、貴重なオ イルでもあります。米油が脂肪酸組成の割りに熱に強く酸化しにくい理由の一つが、トコトリエノール を豊富に含むことにあります。 そして残りの一つ、③のγ-オリザノールは、米油特有の成分です。 γ-オリザノールについては、食べても塗っても素晴らしい効果があるため、次回まとめて書きます。 きっと、私たち日本人の健康を支えてきてくれたお米の力を、改めて感じていただけることと思います。