コラム vol.11 『植物油の選び方』
数年前のココナッツオイルブーム以降、健康に良いとして様々なオイルがメディアで取り上げられ、 スーパーのオイル売り場の棚は、ここ数年で倍のスペースになったとも言われています。 でも種類が増えれば増えるほど、何を選んだら良いのか分かりにくくなるようで、私のセミナーでも 「何を買ったらいいのか分からない」という声もよく聞きます。中でも最近は、亜麻仁油とえごま油は どちらが良いか?という質問をよくいただきます。 亜麻仁油とえごま油はどちらもオメガ3のα-リノレン酸が主成分のオイルで、その含有量はメーカー によって多少異なりますが、どちらも大体55%~65%ぐらい。残りの脂肪酸もオレイン酸とリノール酸 がそれぞれ13%~15%なので、脂肪酸組成だけ見ればほとんど同じです。 ではどちらでも良いのかと聞かれると、そうとも言い切れません。 亜麻仁油はリグナン類というファイトケミカルが豊富に含まれ、その中のセコイソラリシレシノールと いう成分が豊富に含まれます。セコイソラリシレシノールは食べると腸内細菌によって女性ホルモンの エストロゲンと類似した形になるため、エストロゲン様作用があると言われています。エストロゲン様 作用で有名なのはイソフラボンですが、セコイソラリシレシノールはイソフラボンよりも作用が強いと いう研究データもあります。 一方のえごま油には、ファイトケミカルのルテオリンやロズマリン酸が含まれ、どちらも 強力な抗ア レルギー作用のある成分です。 植物油の特徴は、脂肪酸組成に加えて、脂溶性のビタミンやファイトケミカルの種類や含有量の影響も 現れるため、脂肪酸組成はほとんど同じでも、オイルとしての特徴は少し違ってきます。
ここまで読めば、「私はホルモンバランスを崩しがちだから亜麻仁だな」とか、「花粉症がひどいからえごま油にしよう」など、どちらを選ぶかが頭に浮かんだ方も多いのではないでしょうか?
これはオイル選びに限ったことではありませんが、ものを選ぶ時、少しの知識があるかないかで、選択の仕方がだいぶ変わってきます。ものを優越で判断するのではなく、まずはそれぞれの特徴が何かを知ることが大切で、その上で今の自分に何が必要か?何が目的で摂るのか?を考えれば、迷わずに選べる様になると思います。
そして、その方法でものを選ぶようにすれば、ブームに踊らされることもなくなります。
さて、亜麻仁油とえごま油を選ぶ時の話に戻すと、もしα-リノレン酸を摂るのが目的ならばどちらで も良い、他の作用を求めるならファイトケミカルで選ぶということになりますね。 他のオイルでも似通った脂肪酸組成のものはいくつもあります。例えばオリーブオイルとアボカドオイ ル、米油とごま油も脂肪酸組成は似ているので、選び方も同じく、脂肪酸を摂るのが目的なのか?その 他の作用を求めるのか?ということによって変わってきます。
脂肪酸以外の細かい成分についてはまた次回以降にお伝えするとして、今回は、オイルをどういう視点で選ぶかという大枠の部分だけでも知っておいていただけると嬉しいです。