みなさん、おはようございます。インナービューティープランナーの右田和美です。前回は種には「固定種」と「F1種」があることをお話しました。今回は、現在流通しているうちのほとんどを占める「F1種」の作り方を見ていきたいと思います。きっと野菜や種との向き合い方が変わるのではないでしょうか。一緒に考えていきましょう。
F1種とは?
F1種のおさらいです。本来の呼び方は「一代雑種」といいます。高度成長期以降主流となっている種で、雑種強勢という植物の持っている性質を利用して異なる形質の植物を掛け合わせ、一代限りの優秀さを求めた種です。雑種の一代目は両親の優性形質だけが表れるため、一代目は見た目がそろいますが、一代目だけなので自家採種をしてまた育てることができません。また、雑種強勢という力が働いて生育が早まったり収穫量が増大します。F1種を作るためにはまず雑種にしなければなりません。
作り方1:除雄
F1種には自家受粉をしてしまっては作ることができません。自家受粉をしないように雄しべを除く「除雄」という方法が必要です。ナス科の植物に使われました。小さなつぼみを無理やり開き、雄しべを全部取ってしまいます。雌しべが受精可能になったときに別の品種の花粉を受粉させます。ウリ科の植物は、雄花と雌花の二種類の花が咲きます。雑種にするためには、同系統の雄花が邪魔になります。同じ畑の中の同系統の雄花が開かないように全部取ってしまったり、つぼみのときに洗濯ばさみで花が開かないようにとめてしまいます。そして雌花が開花したとき、別系統の花粉をつけます。こうして雑種ができあがります。考えただけで大変そうだし、植物がかわいそうですね。
作り方2:自家不和合成を利用する
アブラナ科が持つ「自家不和合成」という性質を利用した方法です。自家不和合成とは自分の花粉で種をつけることができず、ほかの株ではないと種をつけることができないことです。しかし、同じ母親から採れた種、兄弟分であれば実がつくことがあります。そこで、兄弟の花粉がかかっても受精しないよう、純系の度合いを強めてホモ化させ、絶対に実らないようにする必要があります。この性質は、つぼみのときには働かず、花が成熟してから働くので、つぼみのときにピンセットで開き、すでに咲いている自分の成熟した花粉をつけると受粉します。「クローン」のできあがりです。こうして作られた「クローン」のアブラナ科の掛け合わせたい野菜の種を交互にまくと異なる野菜とのみ受粉をするので、これで目的のF1種ができるというわけです。カブの耐病性を取り入れたF1白菜があります。
大正時代、日本人が除雄を始めました。その後は自家不和合性を使った方法が採用されました。近年はそれらの方法に代わって増えてきているのが「雄性不稔」という方法です。「雄性不稔」とは葯や雄しべが退化し、花粉が機能的に不完全になることです。人で言えば、男性原因の不妊症です。私はこの「雄性不稔」のことを知り、知らないではいけないことだと感じました。ぜひみなさんにも知っていてほしい。しかし、今回ではこのことはお伝えしきれません。次回お話したいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。